第11話 記憶の断片
「……し……おん?」
繰り返して名を紡げば、呼応して
「……
『
『
山藤の下で告げられた求婚の申し出。覚えのない光景はけれど記憶からしっかりとよみがえり、恥じらう
藤の下で逢瀬を重ねる二人が自分であったと認識すると同時に、見たこともない記憶の断片が
遠くで
***
「お嬢様どちらに行かれるんですか?」
屋敷の裏口から人目を憚るように出て行こうとしていた
涼しげな薄水色の着物を着た
「夕刻には
「ありがとう、
急ぎ足で裏口から出ていく後ろ姿を見つめながら、
元来大人しい性格の
そんな
「
駆け寄る
子宝に恵まれなかった
「そんなに慌てなくても私はどこにも行かないよ」
「それはそうですけど……お会いできる時間が限られているんですもの。少しくらい急がせて下さい」
紅を引いた唇を尖らせて頬を膨らませるその様子さえ愛らしく、頭を撫でた手で髪に挿した
「
恥じらい俯く
「やはり君には藤が良く似合う」
呼んだはずの名は
「愛しい
絡めた指。肌を這う熱い舌先。のし掛かる体の重みさえ愛おしく、今この瞬間に互いの家柄や未婚の貞操などは邪魔でしかない。
いつかは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます