第2話 唐棣家の一人娘
「いやぁ、いつ見ても見事な藤ですな」
縁側に腰掛けた初老の男が、出された茶を啜りながら庭園の藤棚を眺めて感嘆の声を漏らした。
「
隣に座って一緒に藤を見ていた
「鬼憑きと、言いたい者には言わせておけばいいのです。確かに一年中花を咲かせる藤とは、珍しさを通り越して奇っ怪ではありますが……この藤のおかげで
優しい声音で助言されても、
真偽のほどは分からないが、藤の木の下に
使用人が長続きしないだけで他にこれと言った問題もなく、むしろ満開の藤の美しさを年中堪能できると、
しかし
藤を見て、純粋に美しいと思う。けれどその妖しい魅力の影に隠れた「何か」が、時折ひどく心を揺さぶってくるのだ。
風に揺れる花の囁きすら、誰かの声に聞こえて恐ろしく感じることもある。いっそのこと切り倒してしまおうかと思ったこともあったが、そうしないのは病に罹っていた一人娘の
藤を切り倒すことで、再び
「あ、
名を呼ばれた
濡羽色の髪は背中の中程で艶やかに揺れ、耳の後ろに挿した白い花飾りとの対比が美しい。着物の裾にちりばめられた小花と蝶の模様も華美ではなく、儚い雰囲気を纏う彼女に良く似合っていた。
「これは
「最近はずっと調子がいいんですよ。これも
二年間床に臥せっていた為か、
医者として、仕事は少ない方がいい。病を発症した当時の
「
差し出された紺色の風呂敷は
「それは構いませんが……もしかすると
「え?」
「
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