第8話 鬼雨
昼を少し過ぎた頃、突然訪れた
病を克服してから半年、
「二人が一緒になってくれればと思いましたが、こういう話は無理して進めるものでもありませんからな。逆に気を遣わせてしまって悪いことをしました」
「
縁談を断る理由にしては曖昧すぎたが、鬼への恋慕を口にするわけにもいかず、今の
「そうですか。いや、私も少し急ぎすぎました。
「すみません。私からも後日きちんとお話します」
帰り際にいつもの薬を受け取って、来た道を
「
傘のことなど全く頭になかった自分を悔いた
「お嬢様、こちらへ!」
普段であれば決して近寄らない陰鬱とした空き家だったが、
草木をかき分けて朽ちかけた家の軒下へ滑り込むと、
「すみません、お嬢様」
「大丈夫よ。出かけるときはあんなに晴れていたんだもの。
そう慰める
「お嬢様。少しの間、ここでお待ち下さい。屋敷に戻って傘を取って参ります」
「えっ?」
「私の足なら時間はそうかかりません。すぐに戻って参りますので、お嬢様は体を冷やさないようにお願いします」
手拭いを渡すついでにぎゅっと
「
走り去っていく背中へ呼びかけた声は、より一層近くで唸る雷鳴に重なって
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