概要
この卵を一週間以内に他の誰かに転送しないと、あなたは不幸になります。
ネットの友人が自室で死んだ。その部屋は密室となっていたという。しかし、他殺ではない。自殺でもない。内側から、完全に密封された部屋で——彼は、みずからが自然に衰弱死するまでを過ごしていたのだ。
彼の死後、私は彼の部屋で奇妙な内容が記された一枚の紙片を見つける。
『これは天使の卵です。1週間以内に他の誰かにこの卵を転送しないと、あなたは不幸になります。』
彼の死後、私は彼の部屋で奇妙な内容が記された一枚の紙片を見つける。
『これは天使の卵です。1週間以内に他の誰かにこの卵を転送しないと、あなたは不幸になります。』
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!耽美的怪奇文学!
精巧な筆致に乗せられるものは谷崎ふうの歪曲された美である。まぎれもなく条理に支配されたわれわれの世界にひそむ不合理の事件が、まるで事実のようなリアリティをもって描かれる。
「私」のなんの変哲もない部屋が不浄なユートピアへと変貌する。しだいに部屋を満たす穢れていて、しかし美しいものたちの羅列はワイルドの短編小説のように鮮やかに提示され、その中心にまします「天使」といわれるただ美しく清らかな存在によって、たしかに「私」の日常は破壊されてゆく。
「私」は彼と同じように死ぬのだとわかっていながらも、そうせざるを得ない脅迫によって、みずから美しい死へと突き進んでゆくことになる。
短くも研ぎ澄ま…続きを読む