006

相変わらずな態度だが、文句を言いつつもやるべきことはきちんとやる人なんだと奈々は思った。


ここ数日、奈々は倉瀬の言動を伺っていた。

初めがあんな印象だったので、先行き不安だったのだ。

庶務は言ってしまえば何でも屋さんなので、できれば波風立てずにまわりと上手くやっていきたい。

倉瀬ともいがみ合わずに接したいと思っていた。


倉瀬の仕事ぶりは、端から見ても丁寧だった。

まわりからの信頼も早々に得ているように見える。

他人の意見に流されることなく自分の意思をしっかりと持って発言している。

かと思えば、人の話に耳を傾けるといった協調性もあるようだ。


案外、悪い人ではないのかもしれない。


奈々は渡された書類を処理しながら、ぼんやりとそう結論付けた。


「でも態度はあまりよくないかなぁ?」


自席で小さく呟き、苦笑した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る