019
倉瀬なんてどうでもいいと自分を納得させようとするが、どうにも気になって頭から振り払うことができない。
倉瀬と腕を組んでいた彼女はとても甘えた様子だった。
あれが彼女じゃなければ何だというのだ。
その光景が目に焼き付いてしまって消すことができず、奈々は深くため息をついた。
見ていられなくて思わず逃げたことに激しく後悔の念がわく。
「私と倉瀬さんは何でもないんだから。」
口に出してみると、虚しさが大きくなった。
倉瀬は奈々にキスをしたが、その後は何もない。
謝罪はおろか言い訳すらしない倉瀬に、奈々はひとつ結論付けた。
倉瀬にとっては自分もたくさんいる女の中の一人でしかなく、遊ばれたのだ。
だから本気にしてはいけない。
勘違いしてはいけない。
なのに、モヤモヤするこの気持ちは何だろうか。
心にふつふつと湧き上がる黒い感情に胸が締め付けられる思いがした。
鼻の奥がつんとして、気を抜くと涙が出そうになる。
ちょっと足を伸ばして買い物に来たのが間違いだった。
もうどうでもいい。
一刻でも早く家に帰ろうと、奈々は足を速めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます