014

倉瀬が手伝ったおかげで、修正作業はその後三十分程で終わった。

修正した伝票を印刷し、全てまとめて社内便の封筒に入れる。

宛先を書いて専用ポストに入れて完了だ。

これで明日の朝一番の便で経理部門に届く。

データはすでに経理部門に届いているので、これから経理の人たちが残業をして処理するのだろう。


「ふう。」


思わず息が漏れ、奈々は座ったままうーんと背伸びをした。

思わぬ残業になってしまったが、倉瀬の優しい部分もかいまみえて何だか心がふわふわしている。


とんっと、目の前にイチゴミルクと書かれたピンクの可愛らしい紙パックのジュースが置かれ、奈々はそこから視線を上げた。

なぜだかそこには仏頂面の倉瀬が立っていた。

奈々は訳がわからず首を傾げる。


「これからはちゃんとまわりを頼れよ。」


ぶっきらぼうながらも倉瀬の優しさが滲み出ていて、奈々は胸がじんとした。


それにしてもイチゴミルクと倉瀬があまりにも似合わなくて、奈々は思わず笑ってしまう。


「ありがたくいただきます。」


微笑みながら受け取ると、倉瀬は目で頷いた。


早速ストローをさして飲むと、甘さが空っぽの胃にじんわりと広がっていく。

イチゴミルクと倉瀬の不器用な優しさが混じりあって、奈々の体に優しく染み渡った。

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