016
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最近休みの日は仕事をするか家で読書をしている倉瀬だったが、今日は野暮用で街に繰り出していた。
とても天気がよく、用事を済ませたら少しブラブラと散歩でもして帰ろうかとぼんやり考えていたのに、早々に外出したことを激しく後悔することになった。
「ねえ、祐吾ってば~。待ってよ~。」
「はぁー。」
倉瀬は大きくため息をつく。
ゆるふわに巻かれた髪の毛を可愛く揺らしながら倉瀬を追いかける女は、甘ったるい声で倉瀬を呼んだ。
昔気まぐれで何度か遊んだ女にばったり出会ってしまったのだ。
一時は倉瀬の彼女という位置付けだったが、倉瀬的には適当に遊んで適当に別れた記憶だ。
それがいけなかったのか、女の方は未練たらたらと言わんばかりに未だに倉瀬に付きまとう。
「ねえ、何でメールの返事くれないの?」
言われて、そういえばメールも無視していた気がすると頭の片隅を過った。
が、すぐにどうでもいいと思考は元に戻る。
「祐吾ぉ。たまには遊んでよぉ。」
無視を決め込んで早足で過ぎ去ろうとしたのに、女は甘えた声を出しながら倉瀬の腕に絡みついた。
面倒くさいにも程がある。
倉瀬は適当にいなしながら、さてどうしたものか、そこの交番にでも押し込んでやろうかとうんざりしながら足を進める。
と、倉瀬は反射的に腕に絡んでいた女を思いきり引き剥がした。
「痛いっ!祐吾っ!」
思った以上に強い力で押され、女は悲痛な声を上げる。
プリプリと女が頬を膨らましているのなんてどうでもよかった。
今、倉瀬の前から歩いてきたのは見知った顔、奈々だった。
倉瀬と目が合うと、数歩先でピタリと止まる。
視線が倉瀬から逸れ、横でなんやかや文句を言っている女に向けられた。
倉瀬がしまったと思ったときにはもう遅く、奈々は目を伏せ踵を返して小走りで去っていった。
とんだ失態だ。
倉瀬は毒づいた。
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