夏休み明け。
生徒全体が気だるさがぬぐえない季節でもある。
そんな当たり前の日常から、その日ある一言で、一転した。
「転校生を紹介します」
そう言って、登場した転校生の名前は江草朝露という美少女だった。
そんな彼女との出会い。
主人公の大輔はひょんなきっかけから、朝露と関わることが多くなり……。
青春という言葉一つでまとめてしまうとまた違う話になると思いますが、本作品の魅力はきっかけがなんであれ、私は大輔が自分の本当の心に「気付いた」ということがとてもよかったと感じました。
「朝露」のような心でいれるのは、それこそ学生のときだからこそ輝くもの。
大人になると、そうもいかないのです。
だからこそ、大人は青春を送れる子供を羨ましがる。
逆に子供は大人が自由に見えて、早く大人になりたがる。
彼らの出会いがいいものである。
必ずどこかでまた繋がれると信じています!
素敵な物語、ありがとうございました!
朝露と言うサラッとした綺麗な単語がこの作品では比喩であったり名前であったりする形で意味を持ちます。その清廉な単語に潜む妖しさと言うか。
後半に襲い掛かる不安感は主人公の心情と重なり没入感が一段と増します。
自分が浮ついた気持ちになる、その異性に高鳴る心情。
どうしても見てしまう一挙手一投足。
青春が必ず綺麗にドタバタするだけの世界観じゃなく、どこか生々しさ、そしてどこかで起こってるかもしれない、と。
そう言う意味でも、先述の没入感があるように私は感じました。
大輔くんが目敏く様々な彼女の行動を見ているところも、平静でない彼の心境を表しているようで、人間臭さを感じるところは私の好みでもありました。
登場人物は2人、作品も短編としてとても読みやすい話。
手を出すにはまずおすすめ。
短編で定評の有る氏の世界観を見れる良い作品です。
何故か読み終わった時、ガラスの破片が思い浮かんだ。
割れてしまったガラスはもとには戻らない。しかし、破片はキラキラとして綺麗だが、触れると血が出てしまう。そのままでいるよりもむしろ存在感は増している。そんなガラス瓶が思い浮かぶ小説だった。
あまりに抽象的でレビューになっていないが、事実なので仕方がない。
本作は、大輔と朝露という二人の恋愛小説であり、二人の切ない別れ話だ。
設定自体はありふれている。でも、この小説には力がある。
具体的には何と説明していいかわからない。語彙力が足らず、説得力不足のレビューで申し訳ないが、冒頭の比喩で少しでも感覚が伝われば幸いである。
可愛くて、コミュ力お化けで、頭も良くて、スポーツもできる。そんなスーパー転校生朝露に、主人公大輔は『儚い』と感じます。
その正体が、読み進めるごとに明らかになっていく。
そこかしこに散りばめられたきらきら輝く朝露のような文章を読んでいるうちに、作品世界に没入していきます。世界は文体に宿るのだと確信させられる作品でした。
また、この主人公大輔が、今後どのような人生を送っていくのかと思いを馳せるのは、読後の楽しみだと思います。
私は一瞬バッドエンドを想像したのですが、最後の数行に作者からの救いがあり、ハッピーエンドを想像しなおしました。
私は昼下がりに、早朝の朝露を湛えた道端の草を思い出しながら、それが黄昏に染まる姿を想像しました。
主人公の男子高校生のクラスに、転校生がやってくる。その転校生は儚げな美少女だった。クラスが同じで、登下校の時も同じ駅を使う二人は、徐々に距離を縮めていく。しかし、二人の心地よい時間は、唐突に終わる。
それは彼女の家庭が抱えるある問題によって、引き起こされた。
早朝にだけ見ることが出来る、一滴の雫。朝露。
それは、太陽が昇ると消えてしまう儚い存在。
それでも、彼女はここにいた。
朝露のような奇麗な雫を目に浮かべて。
彼女の見栄。虚栄心。それでも、主人公は――。
切なくもほろ苦い青春の一ページ。
伊勢物語の「露と答えて、消えればよかったものを」という
一節を彷彿とさせる一作。
是非、御一読下さい。