禁断の果実を齧って楽園を目指そう

 あらすじにもある通り、本作は主人公が開幕早々死に、遥か未来の荒廃した世界でヒロインに出迎えられて目覚めるという、衝撃的な展開で始まる。
 まずそこで、読者はグッとハートを掴まれるはずだ。

 そこから始まるポスト・アポカリプス世界の描写も丁寧かつ練りこまれていて、実に魅力的。
 一話一話は短いながらも、毎回無理なく盛り上げてくれるので、なんとも飽きが来ず「次はどうなるんだろう?」とワクワクしながら次話へと思いを馳せてしまう。

 そして、最も心惹かれるのは、やはりヒロインたる薫子の存在だろう。
 ネタバレになるので詳細は伏せるが、彼女は途方もない方法で主人公をこの世に呼び戻し、荒廃した世界でもたくましく生きていく。
 ともすれば彼女は、文字通りの「超人」として読者の目に映ることだろう。

 けれども、それだけではない。
 本作は薫子を漫画的な「超人」としてではなく、あくまでも一人の「人間」として描いているように思え、私的にはそこに最も魅力を感じている。

「絶対に振り返らないオルフェウス」たる彼女が、この先どんな道を行くのか?
 主人公と共に二人の「楽園」へと辿り着けるのか(あるいは作り出せるのか)?

 彼女と彼の旅路を、最後まで見守りたいと思う。

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