あらすじにもある通り、本作は主人公が開幕早々死に、遥か未来の荒廃した世界でヒロインに出迎えられて目覚めるという、衝撃的な展開で始まる。
まずそこで、読者はグッとハートを掴まれるはずだ。
そこから始まるポスト・アポカリプス世界の描写も丁寧かつ練りこまれていて、実に魅力的。
一話一話は短いながらも、毎回無理なく盛り上げてくれるので、なんとも飽きが来ず「次はどうなるんだろう?」とワクワクしながら次話へと思いを馳せてしまう。
そして、最も心惹かれるのは、やはりヒロインたる薫子の存在だろう。
ネタバレになるので詳細は伏せるが、彼女は途方もない方法で主人公をこの世に呼び戻し、荒廃した世界でもたくましく生きていく。
ともすれば彼女は、文字通りの「超人」として読者の目に映ることだろう。
けれども、それだけではない。
本作は薫子を漫画的な「超人」としてではなく、あくまでも一人の「人間」として描いているように思え、私的にはそこに最も魅力を感じている。
「絶対に振り返らないオルフェウス」たる彼女が、この先どんな道を行くのか?
主人公と共に二人の「楽園」へと辿り着けるのか(あるいは作り出せるのか)?
彼女と彼の旅路を、最後まで見守りたいと思う。
あらすじに関しては他の方のレビューで触れられているので割愛しますが、なんといってもポストアポカリプス世界の細かな描写の一つひとつが丹念に作られているのが素晴らしい作品です。
文明崩壊後の言語や社会の変遷といった人文科学方面での考証が行き届いているのがとても心地よく、そういった分野に魅力を感じる人間にはたまらないものがあります。現代人にもお馴染みの「バケツ」や「プルタブ」といった品々が一度カタストロフィを迎えた世界でどのような意味を持つようになったのかは、ぜひ本編を読んで確かめてみてください。
荒廃した首都圏を巡るポストアポカリプス・ツーリズムものとしても面白く、精緻で表現力ゆたかな筆運びも相まって、現在と未来の情景を思い浮かべながら読み進めていく楽しみもあります。
高井戸君と薫子先輩がどのような物語を紡いでいくのか、この先も目が離せない作品です!
高校生の主人公は、高嶺の花である令嬢で美少女の先輩に恋をする。そして、先輩に何故か気に入られ、付き合うことになる。しかし、その幸せな時間は長くは続かなかた。二人の前に飛来したドローンが、先輩に照準を合わせた。咄嗟に主人公は先輩をかばって……。
しかし主人公は、蘇る。それを行っていたのは、先輩だった。そこは先輩が主人公の為だけに建てさせた、研究所のような場所だった。時は過ぎ、世界は荒廃していた。外の様子を知るには、ラジオの放送だけが頼りだった。そんな中、転がり込んできたのは、バケツ10個で身売りされた少女・ノゾミ。そして市場で出会った謎の男だった。この男から主人公たちは、「寺院」がこの地域で勢力を持ていると聞かされる。そんな寺院に、主人公たちは用心棒を依頼されるのだが……。
そして「寺院」は主人公たちが追い払った残党の持ち物に、ラジオがあることを問題視していた。それは何故? さらに、「寺院」は主人公たちと同じような格好の人物を知っているらしく……?
主人公たちはラジオ局に向かって旅立つのだが、そこで待っているのは?
謎の男の正体は?
先輩と主人公は、この荒廃した世界の救世主となれるのか?
まだまだ謎が多いこの作品。
是非、御一読下さい。
ポストアポカリプスものです。
とにかくヒロインである先輩のキャラクターが鮮烈で素晴らしい。
大切な人を喪ってしまった。生命倫理の禁忌を犯せば取り戻せるかもしれない。しかし医学はそこ迄進んでいない。自分自身と愛する人のクローニングを続け、百年、二百年。もはや身体の中には元々の素材は一分子すら残されてないのかもしれない。
それでも、愛する後輩君を取り戻す手段が他にないのならば、ひたすら突き進むヒロイン。
ポストアポカリプスの世界は過酷かもしれないが、この先輩と共にならば生きていける。
この先を見てみたいと思わせる作品です。
間違いなく本作のヒロインである薫子先輩は超人です。
社会的な常識や倫理から、自己を切り離し。
クローニングと記憶の継承によって時間を得て恋人を蘇らせる道筋は
良くも悪くも真っ当な人間では不可能な偉業であったと思います。
それに対して、彼女の思い人である和真は何者なのか?
恐らく普通の人で、そしてだからこそ超人足る先輩では、
個人で完結した人では及ばない所に手が伸ばせる人で。
何より、あえてこう表現しますが。その《前世》から
行動できる普通の人であると思うのです。
だからこそ彼ら二人と、そしてこの未来で出会っていく人々が
何を目指し、どこに辿り着くのか。とても楽しみに読ませて頂いております。
ごくごく平凡な少年が、才媛才女の見本市みたいな属性過積載マドンナと結ばれるお話です。しかし、気持ちを通わせ合った二人を悲劇が引き裂く。そこから始まる壮大なSFロマンなんですが、これが軽妙で屈託なく、あっという間に読ませてしまう。また一つ、傑作の誕生を目撃した気分です。
時を超え、荒廃した世界に蘇るアダムとイヴ。
本当にもう、溺愛ここに極まれりという行動力と決断力で、スーパーヒロインが知的に大活躍です!一度でいいから、自分もこんな素敵な女性に誠心誠意ガッチガチに愛されてみたいですね。本作のヒロイン、薫子先輩の魅力的なキャラにも強く惹かれました!