第21話 1年5組 山口 海里

17:29女子トイレ前


『ここに今井先生が入るのを見た気がして……』

やべ、思いつきで言っちゃった。

片平先生疑ってんなー。そりゃそーか。


『……ちょっと確かめる。お前は待っとけ!』

片平先生は「ちょっとはいるぞー!」と言って女子トイレに入っていった。



すると恥ずかしそうに市野と前田が出てきた。

3組の、どちらかと言えば下層カーストの奴らだ。



『あ、山口くん!なにしてるの?』

前田ミサが声をかけた。

うるせー、今それどころじゃねえ!


『いや、ちょっと。』


『ほら、ミサ言っちゃいなよ。』

市野が前田になにか言っている。


『…山口くん、あのね?』


『なんだよ?』


『……私と付き合ってください。』

前田はぺこりと頭を下げた。


『やだよデブス。はやくどっかいけ!!』

一日のストレスの全てを込めて言ってやった。


前田は泣きながら走り去り、その後を市野が追った。


よし、何はともあれ人払い成功!


でもどうする?俺が思いつきで言った嘘のせいで片平が…。


と、片平が女子トイレから顔を出す。


『今、大人同士の大事な話し合いだから、君は何処かへ行ってなさい。』

片平は真剣な顔だ。


なんなんだよ、ここにいるのは小西だぜ?

もういいやめんどくせー。




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