ソフトクリーム

 わっと炎が燃え上がったかと思うと、炭が勢いよく跳ぜる。次いで白い煙がもくもくと上がりだして、網の上のお肉がみるみるジュウジュウと焼け焦げていく。「ちょちょ、ちょっと並べすぎた、ニャッ」銀目が慌ててお肉を端に避けていきながら、澄はといえば、団扇を扇ぐのをやめて立ち上る白煙にごほごほと咳き込んでいた。開封して半分網の上に空けたままのお肉の袋を握りしめ、どうしたものかあたふたしながら成り行きを見守っていると、次第に白煙が収まっていき、網の上に焦げ付いたお肉が残った。


「うーん、焦げちゃったね」

「ごめん……」


 澄の言に、銀目の猫耳がうなだれる。澄が袋を受け取ってくれて、替わりに紙皿を手に取り銀目の方に差し出すと、焦げたお肉がたちまち積み上がっていく。


 *


 だんだんうまく焼けるようになってきて、銀目と私と順繰りにお肉を焼いていく。バーベキュー広場は他にもたくさんの人で賑わっていて、あちこちから楽しげな声が聞こえてくる。


 昼下がりの陽気。日差しもだいぶ高いので、少し暑いとも感じる。立ち込める炭火の焦げくさい匂いの奥から、かすかにキンモクセイが甘く香っている。


「はい、これ」

「うん~」


 次は澄の番なので、私は澄にトングを手渡した。澄はモグモグとお肉を食べながら紙皿を置き、トングを持つなり慣れた手つきでお肉を返し始める。


 *


「も~食べれないニャ」

「結構余っちゃったね」

「持って帰ろうか……」


 そうだね、ニャン、二人が同意し、食べ過ぎで動けなそうな二人の代わりに、お肉と、野菜と、焼きそば用の中華麺とを小型クーラーボックスに詰め込んでいく。四脚テントの足元にパイプ椅子に座って涼んでいると、時折風が起こって澄んだ空気が流れてくる。――できれば焼きそばも食べたかったな。少し心惜しく思いながらクーラーボックスの蓋を閉じる。


 *


 公園の入り口近くに売店があって、澄がソフトクリームを買ってくれた。売店の前には丸い四人掛けのテーブル席がいくつか並んでいて、軽く飲食ができるようになっている。私たちは三人でテーブルを囲い、透明な匙でめいめいソフトクリームをつつく。バニラ味を買った澄が大変美味しそうな顔をするので、抹茶味にしたことを少し後悔してしまう。……美味しいは美味しいけれど、よく考えると、バーベキューの後に抹茶味というのも――あっ。


 「バーベキューの後にアイスって、変……?」思わずそんな言葉が口をついてでる。微妙……かもしれない。食べたいと言ったのは自分だったけれど、なぜだか急に申し訳なくなってくる。


「んー? 美味しいよ?」


答えてから再び匙を口に運びだす澄。「……エンターン、ちょっと貰うニャ」突然横から匙が伸びてきて、ビックリしている間に匙はこちらの抹茶ソフトを掬っていく。見れば銀目はイチゴ味を既に食べきっていて、「フーン、抹茶も美味しいね、ニャン」少し上から目線な彼女の言に、澄が苦笑している。

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