花の頭蓋に、男は何を言えばいいのか。

 頭蓋に花が満ちていき、それが埋め尽くされたときに彼女は死ぬ。衝撃的な病が冒頭に示されて、美しい病状と残酷な死のコントラストが印象的でした。効果的な治療はなく、延命の手段は脳内の言葉を吐き出していくことくらい。文字として吐き出し小説を紡ぐ先輩の姿は、物書きとしての苦悩をまざまざと見せつけられるかのようです。書かなければ生きていけない。生きていけないが産み出せない。
 頭蓋に花が満ちる、そこまでの二人の日々に尊さや儚さを感じますが、個人的に印象に残っているのは最後のシーンです。何を言えばいいのか、どう返事をすればいいのか。そこに彼の思いが詰まっている気がして、胸を抉られる思いです。

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