非日常な光景を目の前にしているのに「ぼく」の語り口調が妙に淡々としていてどこかコミカルなところがツボでした。「猫」がキーワードの一つになっているところも見逃せません。ラストはなるほど「ぼく」らしいラストだと感じました。とても面白い作品です。
独特な雰囲気のブラックユーモア。主人公のとぼけ具合が絶妙で、その緩さが本作の魅力。3行に1回の割合でくすっとくるので満足度も高い。
少し変わり者のぼくの、達観した目線と軽妙な語り、気の持ちように気付いてからの穏やかで楽しげに移ろう雰囲気が好きでした。もしベスト5に出会っていたら、きっとなにかにつけて回避していたのかなぁ、とも思わせるような若い空気感が良かったです。
ぼくの死体からはじまる、たんたんとした語り口がクセになる黒い扉を開けることが日課になってからの考えるようになったぼくのむなしさは感慨深いです
あらすじにある通り、『ぼく』は家を出る際に死体を目にすることとなります。そして、そこから彼の脳内が混乱を起こしている様子がひたすらに続くのですが、その考えがとにかく面白い。一つ一つ、引き出してきた例えがセンス全開で笑わせてくれます。『ぼく』の独特でどこか呑気な考え方と、目の前に起きている恐ろしい出来事の対比が見事です。非常に面白い物語ですが、生きることについても考えさせられる作品です。
朝扉を開けたら、自分の死体があったーー そんな衝撃的なシーンから始まる、けれど恐ろしいだけではなくどこかコミカルな物語。独特かつ秀逸な言い回しを駆使しながら語られる「死」に関する興味深いお話でした。
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