近代及び現代市街戦における攻撃

市街戦闘における攻撃


市街戦の場合も、攻撃の基本は他の場合と同様である。しかし多くの場合攻撃目標が建造物となるため、適した手順をその都度考えなくてはならない。戦場の違いによって戦術は多様に変化する。特に屋内戦闘は複雑なため、現場指揮官と兵士の戦術能力に頼るところが大きい。ただし一般的には以下の要領に従うべきである。


・攻撃目標の選択

 都市には多数の形態が考えられ、優先すべき目標は千差万別である。そのため攻撃前に目標都市の偵察や、詳細な地図の入手を行い、緊要地形や狙撃手のいそうな場所を確認しておくのが望ましい。

 工業地帯や物流拠点は、主要なインフラが近接している場合が多い。そのため緊要地形となりやすく、絶対に確保すべきである。しかし敵も優先的に防衛することが予想されるため、入念な準備が必要だ。

 さらにこうした箇所は市街地であっても比較的開けている場合が多く、装甲戦闘車両の侵入が容易である。

 民間人の保護が必要となる場合は、住宅地も優先的な目標となり得る。小銃弾は容易に一軒家の壁を貫通するため、先頭には細心の注意が必要だ。


・砲撃による戦場支援

 市街地の場合、目標の多くは建物によって掩護されている。そのため大きく山なりな弾道で目標を狙わなければならない。

 しかし対砲迫レーダーが配備されていた場合、近接地からの山なりな弾道は容易に部隊位置を露見させる。よって射撃後は迅速に移動しなければならない。

 こうした理由から、市街戦における支援砲撃の効果は限定的となる。都市中心部となれば、迫撃砲による火力支援が精一杯となるからだ。榴弾砲による長距離砲撃も可能だが、目標が建物に援護されていた場合は不可能である。陣地転換により掩護されていない箇所から砲撃を行うことも可能だが、全方位に渡って援護されていた場合、榴弾砲は役立たない。接近して角度をつけることも可能だが、長距離砲撃による弾道の不安定さがなくなるため、対砲迫レーダーによって容易に探知され、敵の間接照準射撃が行われる(異論を後述する)。迫撃砲も探知されるが、移動が榴弾砲よりも楽である。


 ただし市街地に持ち込めるのならば、榴弾砲を迫撃砲的に運用することも可能と考える場合もある。

 第一に、市街地は銃声等の乱反射により対砲迫レーダーの精度が低下すること。第二に、射角を増すことで敵の間接照準射撃の死角に入ることができること。この二点から、榴弾砲による市街砲撃は有効な可能性がある。

 ただしいくつか注意点がある。

 第一に、火砲が1070ミル(61度)以上の射角で射撃を行っている場合、掩護として使う建物の高さの半分に当たる距離を超えて火砲を接近させてはならない。

 第二に、800ミル(46度)よりも大きな射角で射撃を行う場合、その建物の高さと同じだけの距離を確保しなければならない。

 第三に、535ミル(31度)よりも大きな射角で射撃を行う場合、建物の高さの2倍の距離を確保するようにすべきである。

 こうした要件を満たすのなら、市街地への攻撃に榴弾砲の使用も不可能ではない。

 


・建造物への攻撃準備

 建物への攻撃を行う場合、出来うる限り二個小隊以上の戦力を以って当たらなければならない。建物の攻略中に、敵増援が現れるリスクがあるためだ。非突入部隊の役割は建物の周囲を囲むように射線を通し、突入部隊を支援することである。増援の到来を防ぎ、突入部隊の退路を確保しなければならない。


・建造物への突入

 建物に突入する部隊は、その建造物や陣地で最も弱い部分を見極めてそこに火力を集中し、一挙に侵入しなければならない。できる限り、援護射撃が可能な程度の突入口を選択する必要がある。


 地上から建物を攻撃する際は、扉や窓など予測されやすい箇所ではなく、外壁を爆破して突入するべきだ。

 屋根などを伝って屋上まで移動出来る場合は、出来る限り屋上から攻撃するべきである。圧迫誘導によって敵を屋外へ退却させ、先述の支援部隊にそこを狙わせるのも良い。

 高層建築物を標的とする場合は、空中機動を用いてでも屋上から侵入するべきである。後述する通り、階段が極めて危険なためだ。


・屋内の機動


 突入部隊の最小単位である班をa,b.c.dの四人班とする。


 屋内の通路を移動する際は、四人で菱形か、前方に開くY字型(陣形名はV字型)の陣形を組む。部屋から部屋に移動する際にも、互いの射線を邪魔してはならない。


 丁字路の上辺を右に進む場合、近接する二名が脇道の警戒にあたる。侵攻方向から順にaとcの場合、まずaが射線を通し、通過しながらcも射線を向け、aから順に射線を外す。この際b.cは前後の警戒にあたる。

 進行方向で丁字路が左右に曲がる場合は、前方の二名がそれぞれ壁際で左右に展開する。後方の二名はその背後を通ってから左右に展開し、安全を確認する。安全が確認された場合、向かいたい方向へ菱形隊形を取って進む。


 階段を移動する場合、外側および前方を警戒する担当、内側および踊り場を警戒する担当、動かずに上階の方向を警戒する担当の三人で行う。階段は特に危険であり、罠や障害が仕掛けられる場合も多いため、四人ではなく三人で行う方が良い。


・個室への突入


 個室を制圧する際は、突入前に手榴弾又は閃光手榴弾などを投げ込む。

 その後の手順は次のようになる。

 第一段階・aが侵入と同時に左右どちらかに移動し、bの射線を確保する。

 第二段階・bがaの反対の方向へと侵入し、cの侵入を誘導する。

 第三段階・cは入口の付近から少なくとも1メートル以上侵入し、同時ににaとbはそれぞれ左右の壁沿いに部屋の奥へと移動する。

 第四段階・続いてdが部屋に侵入してcと反対の方向に沿って1メートル以上移動する。同時にaとbは部屋の最深部まで移動する。

 第五段階・窓や屋根裏などを確認し、敵が脱出していないか確かめる。

 第六段階・他の味方に部屋を制圧した旨を伝える。


 市街戦の基本的な要領は以上だ。

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