第15話

第三武道館を視察して分かった事がある。ここの使用人は、レシツィア王国に誇りを多大に持っている事だ。それ自体は非難されるようなものでは無いが、そんな意識が蔓延している事で小国には到底必要の無い事や妥協がなされていない。


これでは手始めに第三武道館を売るだなんて言ったら、その瞬間彼らは大反対するだろう。王家が王宮を民に売り渡すなど言語道断だ、と。だから今までこんな無駄にデカい王宮を使い続けていたのだ。

さらに厄介な事に、その誇りは簡単にはどうする事も出来ない。時間をかけて少しずつ改善するしかないのだ。


「あぁ、中々上手くいかねぇなぁ。」


な○うかなんかの内政物は一体どうやってこんなん解決してたんだよ。蒸気機関でも作ったのか?


そう思いながら去年の財政報告書を眺める。

まず一番終わっているのが国債が歳入の割合で一番大きく40%を越してるのと、国債返却も支出で二番目に大きくなっているという事だろう。完全に自転車操業みたいになってるじゃん...どうすんだよ...

この時代、今と違い地方交付や社会保障費なんてもんは存在しない。(というか地方貴族の方が余っ程稼いでるだろ...)

その代わり目につくのが軍事費、王宮管理費だろう。軍事費に至っては支出の半分くらいを占めている。明らかに小国には過剰な予算だ。

爺に聞くと、これも内乱の影響だという。内乱のため軍事費を上げたまま、下げようとすると軍部が猛反発するという。

王家の権威は軍にすら効かねぇのかよ....

そんな絶望が脳を過ぎる。


取り敢えず軍事費を下げる為にも、軍の整理をしなければならない。そう思い、軍の最高責任者である、アームステトヴ=ドゥエセタレシツィア王国軍総司令官を呼び出した。


「今回は何用で、私を呼び出したのでしょう。」


そう言うドゥエセタの声は、齢八十を優に越すにも関わらず、ハッキリとした声であった。


「単刀直入に言おう。軍事費の支出が多すぎる。これでは国の財政が破綻してしまう。」


そう伝えると、ドゥエセタは悩ましそうな顔をしながら返した。


「ですがのぅ、軍も全く一枚岩ではないのですぞ。特に歩団派と騎兵団派の対立が激しくて、どちらを減らすともう一方の力が大きくなってしまいますし、今は休戦状態とはいえ、未だ我々は内乱状態ですぞ...」


流石先の内乱でのレシツィア王国最大の功績者であるだけある。軍の現状を良く把握している。

そのままドゥエセタから軍の現状を聞き続ける。何処か削れる無駄がないか考えながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る