第12話
「ルーグス?なんだよ、いきなり来て。」
突然のルーグスの登場に俺もウィスクライブも驚く。
「いやぁ、久しぶりに暇だから兄さんの所に居るかわい子ちゃんにでも会おうかと思って来てみたら、面白い話をしてたもんでさ、つい聞いちゃったよ。」
俺の所にいるかわい子ちゃんはゼールストワイズの事か?端で紅くなっている。
「それで、なんで任せとけなんて言えるんだ?なんか策でもあるのか?」
そう言うとルーグスの顔が神妙になった。
「ん?ああ、兄さんすら知らないんだ...」
「何のことだ?」
ルーグスが言いたい事が皆目検討もつかない。
「いやぁ、なんていうの...、言いにくいなぁ。一応絶対口外しちゃダメだって皆に言われてるし...」
「??」
急に言い渋るルーグスの姿に俺は困惑する。
「では、ここは私の口から言いましょう。」
急にウィスクライブがルーグスのフォローをする。
「王太子様はアイヒシア商会をご存知で?」
「ああ、それぐらいは当然知ってるさ。」
アイヒシア商会とは大陸西部にあるフロレーネ帝国を拠点としドイッヒア諸国やリッヒネルン、果ては教皇領までの商業を掌握している大陸随一と言ってもいい大商会である。
そこの会長とツヴァイシア家公爵家は懇意なのか?そんな疑問を浮かべていると、ウィスクライブは話し出した。
「実はあそこの商会を実質支配下に置いているのがルーグス様が当主をなされているツヴァイシア家なのでございます。」
はぁ?
はぁぁ?
あのアイヒシア商会が?
ツヴァイシア公爵家の支配下にあるぅ?
意味わかんなーい。王家より全然ツヴァイシア公爵家の方がすげぇじゃん。もうレシツィア王国の国王ツヴァイシア家から出した方がいいんじゃない?全然そっちの方がいいよ。絶対。
そう思っているとルーグスが口を開く。
「
いや、そりゃそれはいい話しだけどさ...
未だに頭がついていけてない。いや、簡単に信じられねぇよ。レシツィア王国の懐刀、ツヴァイシア公爵家、恐ろしき家なり。
「だが、それだと逆にカールトン商会が潰れちゃうんじゃないか?」
カールトン商会もモスキュースト大公国を拠点とし大陸東部の殆どの利権を欲しいままにしている大商会、グローシティツヌイ商会の傘下商会であるが、流石にアイヒシア商会に立ち向かう程の力は無い。
「いや、大丈夫だよ。グローシティツヌイ商会も全力で向かい撃つと思うよ。なんたってレシツィアを失うと次はガチッガチのあいつらの利権を失う事を意味するからね?」
そう言ったルーグスの顔は完全に商売人の顔だった。
商業ギルドにて
「おい、マックス!大変なニュースだぞ!」
小太りで特徴的な探偵帽を被った男が商業ギルドに飛び込んできた。
「なんだ、ルーベル、浮気してんのがバレたのか?」
ルーグスの大変なニュースは大体そんかものだ。名を呼ばれたマックスも落ち着いたまま適当に返した。
「違ぇわ!まず浮気なんかしてねぇ、というかそんなこたぁどうでもいいんだ。」
何時になくルーベルは落ち着きがない。
「じゃあなんだ?一体。」
「この国にアイヒシア商会が参入するらしいぜ。
どうだ?驚いただろう?」
ギルドに居た商人達にとってそれは余程衝撃的であっただろう。今までルーベルに見向きもしなかった者達も一斉にルーベルを注視する。
「それは、本当か?ルーベル。」
マックスは緊張で喉を鳴らしながらルーベルに確認する。
「あぁ、本当さ。なんならこの命をかけてもいい。」
平然とルーベルはそう言った。
その瞬間、商業ギルドは一気に騒がしくなった。期待と不安が入り交じった歓声がギルド一杯に響き渡った。
「商業ギルドってオッサンしか居ないのね、臭そう。」
「如何にもルートゥウェルにぴったりね」
「なんですって!?」
ルートゥウェルが泣きながらゼールストワイズをタコ殴りにするのを観ながらウェルスは思った。
(こいつら仲良く出来んのか?)
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