第10話

イルザール派が力を失った事もあり、漸く王太子ヴァイネスは一応その立場は確固たる物になり、内政も出来るようになった。

内政に必要なのは金である。制度を作るも新たな商業を興すも何をするのも金が必要となる。レシツィア王国にはまずその金がない。貴族達の汚職と内乱による国内の荒廃で税収は落ち、なのに大して支出は減らない。財政は当然の如く真赤である。


「いや、それにしても酷くないか?」


一つの国の財政と思いたくない程酷いぞ?


まずレシツィア王国の税制は無駄が多い。国として取る税も回収は治めている貴族に任せっきり。当然汚職が横行する。しかも税の内容も人頭税を代表に誤魔化しやすいものばかりだ。その上貴族達も自由に税をかけることが出来るため、貴族の重税が民衆に重くのしかかり、民衆の反感を買っている。


そこでまず手をつけたのは税を直接徴収する者を地元貴族から変える事だ。丁度アルスラール家関係の人物で謹慎させられた中に財務大臣が居た。その後任に爺の信頼出来る友人であるウォッホ=ルクルート卿を当てた。さらに財務省内の人事からも貴族の影響を取り除いた。


そうして一先ずは財務省を信頼出来る機関にして、国の課す税の徴収者を財務省に置き換えたいのだが...


貴族からの反発が予想以上に大きかった。特に王国四大貴族の尽くが反対に回った事で実現は不可能に近い。


「うわぁぁぁぁぁ!邪魔だぁ!貴族の野郎邪魔だ!邪魔なんだよ!お前らの懐は良いかもしれないけど国の懐は死にそうなんだよ!」


そう叫ぶと部屋の端から呆れた声がした。


「当たり前だろう?今の貴族共に愛国心など持ち合わせてはおらん。あいつら好きなのは金集めだからな。」


何だかんだ言いながらもしっかりレシツィア王家の使用人として順応していったゼールストワイズが言い放った。あのエロいメイド服?はあの後は着てない。


「じゃあどうすりゃいいんだよ。」


「さぁ?いっそ奴らの弱味でも握れば面白くはなりそうだな。」


貴族の弱味かぁ。そう簡単には見つからないと思うけどなぁ。そんなことに期待してちゃ運任せだし。

一応爺に調べさせるよう伝えたが、あてには出来ない。


そこで他の方面から攻める事にした。商人達に擦り寄るのだ。関税の引き下げや意味の無くなっていた塩の専売制の廃止をすると共に商業ギルドを作るのだ。そうする事で逆に商業が活発化して経済が良くなるし国内のものの流れも分かりやすい。

こちらは貴族達の抵抗は少なかった。関税の引き下げは多少文句が出たが税の徴収者の変更よりマシと判断したのかあっさり了承した。


だが一方でもう一つ分かったことがある。貴族の権力が余りにも大き過ぎる事に...




「ねぇ、ウェルス。なんで人頭税は誤魔化しやすいの?」


「簡単な話、人を隠せば税を逃れられるだろう?」


「!天才ね!!」


「いや、共感してんじゃないわよ、バカロリ。」

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