第4話

さて、爺も居なくなって数時間。寝て頭を休ませるとやはり覚醒前以外にも多くの記憶が出てきた。

まずこの世界について。

この世界には魔術という概念がある。魔術は自分の魔力を使う事で使用出来るというスタンダードなものだ。魔術の種類も色々で、攻撃魔術に防御魔術、召喚術に強化魔術と多彩を富む。

次に周辺国について。大国は南には異教徒によるヴェシアテ帝国、半島を治める教皇領、西の大国フロレーネ帝国だ。共に他の大国に負けぬよう、小国に分裂したこの大陸中東部に挙って侵略している。

レシツィア王国の北には内乱で分裂したウォルシャネ公国に東部に位置するベルシツェ王国、南部は山脈を挟みアルシア公国やマルワーツ王国、イレジア伯国があり、西はコルトフ公国がある。国力は東のベルシツェ王国が一番大きく脅威となっている。


最後は一番の懸案である国内だ。国内の貴族間の対立において一番の基本は信用出来る味方を複数作る事だとな○うの作家達が言っていた。信頼出来る味方と言えばの王太子ヴァイネスの実母の実家、オルヴァース伯爵家に爺の実家、オットー=アーヌス伯爵家が筆頭だろう。だが、やはりそれだけでは少なすぎる。第一それは弟のイルザールにもそれぞれいる。

というか、

「内乱なんかしたってなんの得にもなんねぇよ!!」

そう、内乱したって何も良い事はないのだ。どこか他国に頼ったら最後、その貸しは相手に良いように使われてしまう。国は荒れるし経済も打撃を受けるし、人は死ぬ。何が良いのかさっぱり分からない。ただでさえ内乱で荒れているのに、更に内乱するとかもうマジバカでしかないのだぁ!

だから一番良いのは内乱を起こさせない事なんだが。それが出来れば簡単なんだよ!


「若様、包帯を替えに参りました。」


そうこう考えているうちに使用人の声がした。若い女性の綺麗な声だ。


「あぁ、入ってきてくれ。」


そう言った瞬間、何故だか分からない違和感を感じた。全く違和感を感じる場面はないはずなのに。

そうこう思ってるうちに使用人は1人で・・寝ているベッドの横までやって来た。


「忙しい中、1人で・・ご苦労だな」


「いえいえ、私は使用人ですから」


その言葉を言った瞬間、神が起こした奇跡のように王太子おれ 記憶が戻った。幼い時、心配性であった母が定めた家のルールを。

そのルールは簡単だ。俺の寝室に入れる使用人は爺だけという至って簡単なルールであった。


焦って使用人の方を向いた刹那、不審者しようにん の手のなかに鈍い鋼の反射を見た。


避けれた事はそれこそ奇跡、俺の動物的本能の賜物だった。

刃先は微かに俺の頬を傷付けたのみであった。

だが、次はない、次来たら今度意味するは死だ。


「チッ、楽に逝かせたものを!!小僧。だが次はないぞ?まぁ、避けれるものなら避けてみろ」


さっきとまるで違う女の口調にひしひしと死を感じ、目を瞑って数秒、覚悟した死は一向に訪れなかった。





恐る恐る目を開けるとそこには、全身黒ずくめの女が、不審者しようにんのナイフを握った手を抑えつけていた。








「なんか急に人が出てきた!?」


「中々の潜伏能力だな。」


「おっぱいでか!!??」


「ブォッ」


「ウブなウェルスには2億年早いわ!あのおっぱい」


「ゴホッゴホッ、ルートゥヴェル、取り敢えず黙れ」


「おっ?やっぱりまだウェルスには早かった?」


「いや、違う。そんな事言ってると絶対あいつが...」


ドォン(ドアが物理的に消される音)


「だ...」


「誰が貧乳だとゴラァ、このクソロリ!!今こそ一千年の腐れ縁絶ってやるぞごらぁ」

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