第16夜 度胸がついた
学生の時は部活に所属していた。中学、高校、そして大学。今所属している大学の部活には顧問はいない。楽しかったこともあるし、悲しかったこともある。
さて、いつかの部活の顧問がとてつもなく理不尽だったことがあった。
自分の気に食わないことがあるとすぐ
「帰れ!」「やめてしまえ!」
と言うような奴だった。私は暴言に慣れてしまったので、とにかく聞き流すことにしていた。
今思えばそんな部活すぐにでもやめてしまえば良かったのだが、当時の私はここで辞めたら同じ部活の仲間から何を言われるか分からないと感じていたし、残念ながら部活に属する以外の世界を知らなかったので、結局辞めずに最後まで続けて引退した。これでもうあんな理不尽なことで怒られなくて済む、と思うとほっとした。
そんな部活の顧問が、夢に出てきた。
やけに現実味のある夢で、私は同級生や後輩たちと部活をしていた。
当時のシチュエーションはそのままに、私の中身だけが大人の私だ。
ちなみに私はいつも夢の中でこれが夢だ、と気づけないので今回も目が覚めるまでこれが夢だと気づかなかった。
片づけをして、用具室から歩いて帰って来た私を見た顧問が怒りだした。
「なんで歩いて帰って来るんだ!!」
あぁ、そういえば当時は何をするにも走って行動しないといけないという馬鹿げたルールがあったな、と思い出す。部の人数は十分に多いので、いちいち走り回らなくても片づけなんてあっという間に終わるのに、どうして走らなくてはいけないのか。
「なんで歩いて帰ったらダメなんですか、大体そんなのお前が勝手に作ったルールだろ!!!意味のないルールで学生を縛るのはやめろ!!気に入らないことがあるとすぐ怒鳴るのも今すぐやめろ!!」
細かいセリフは忘れてしまったが、確か私は一生懸命言い返した。
ちょっと自分でもびっくりするくらい大声でまくし立てた。
夢の中の私はこれが現実だと思っているので、すごくドキドキしていた。
学生の頃の私はそんな度胸があるはずもないので、一度も言い返したことはない。
だが、夢の中の私は「今の私は昔の私とは違うぞ!」と自信を持って矢継ぎ早にまくし立てた。
これに対する顧問の反応が思い出せない。
気が付くと私は同級生とともに顧問の前に並んでいた。
いつも顧問の話を聞くときはこのスタイルだった。
皆が和やかに顧問と話している。ただの雑談である。私が学生の時はこんな風に和やかに顧問を囲んだことなどなかったので、私は混乱した。
気持ち悪いと思っていると目が覚めた。
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