第19夜 病名告知

がらんどうの建物の中にいる。くたびれた白い壁。天井は高く、二階部分まで吹き抜けになっているけれど、ほとんど部屋らしきものもない。よくある病院のような清潔感はそこまで感じられず、どちらかというと廃墟のような印象を受ける。

けれど私はここが病院であると知っている。


名前を呼ばれて診察室へ行く。

診察室といっても個室があるわけではなく、二階のスペースをついたてで分けただけの空間である。


診察室では白衣の人物が神妙な面持ちで椅子にかけている。

私はその顔を見た瞬間、先ほど血液検査をしたことを思い出す。なるほど、その結果報告のために呼ばれたわけだ。

私はなぜか結果を聞く前に、とてつもなく悪い病気だと思ってしまった。

そうなるともうどうしても宣告を聞きたくなくて、私は静かに病室を出た。


誰にも見つからないようにこっそりと隠れていたら、いつのまにか日が落ちかけていた。

ふと二階の廊下の壁を見ると、地図がかかっている。

診察室の見取り図と、その担当の医師の名前がフルネームで書いてあって、名前の横にはごく単純な仕掛けのスイッチがある。用があればこのスイッチを押すように、ということらしい。

私は今度こそ病名告知を受けるべきだろうかと、そのスイッチを前に考え込んだ。


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