第21夜 アイスキャンディーなど3篇


昔懐かしい観光ホテルの白い建物が湖畔に面している。なぜか私はほかの人たちと一緒に湖のど真ん中に立っている。どうして水の上に立てているのかは分からない。

と、突然湖の対岸から弓矢が何本か放たれた。対岸は森になっていて誰が矢を放ったのかはよく見えない。湖はかなり大きいので、当然矢は観光ホテルに届くはずもなく湖にぽしゃぽしゃと落っこちていく。

観光ホテルの最上階の部屋には一部屋につき一人、要人警護の人がベランダに待機していている。彼らが敵襲にいち早く気づいて臨戦態勢をとると同時に、ホテルの一階部分からフェリーが飛び出してきた。その船にはたくさんの人が乗っていて、矢を放った対岸の敵のほうへ向かっていった。

私はそれを湖の上でただ目撃していたのだった。



地下の古びた商店街のような場所で自由行動になったので、私は手元のパンフレットを見ながら目当ての店に急いでいる。

両脇にある店はどれもさびれていて開いているのか閉まっているのかよく分からない。たぶん開いていると思う。私は早足に通り抜ける。

目当ての店に近づいてくると、ひらけたフロアに出た。さっきまでの通路の両脇に軒を連ねる商店街タイプではなく、広いフロアに古書店や手芸用品店が島を形成している。古書店なんかは床にまで古い本が積み上げられていて、店に入っても足の踏み場がなさそうだ。こういうフロアに店が点在しているのは最近のショッピングモールのつくりだ。

目当ての店は突然現れた。アイスクリーム屋である。私はパンフレットを示した。パンフレットにはチョコレートでコーティングした甘いアイスキャンディーがたくさん掲載されているが、私が指し示したのはシャーベット状の爽やかな味のものだ。ラズベリー色のアイスキャンディー(メロン味と書いてある)である。このパンフレットを見せるとタダでもらえるらしい。

私が持ってきたパンフレットを一瞥した店員は、この店に依然来た時のスタンプカードの提示がないと無料で提供できない、と言った。

こんな場所に来たことはないし、当然この店に来るのも今回が初めてだったので私は途方に暮れた。が、なぜかスタンプカードが財布に入っている気がして私はごそごそと財布の中を探った。

はたして、スタンプカードは財布の中から出てきたのだった。一つだけ可愛いスタンプが押してある。ということは私は以前この店に来てアイスキャンディーを買ったことがあるのだろう。記憶にないけれど。

店員はそれを見ると店の奥に引っ込み、鮮やかなラズベリー色のメロン味アイスキャンデーを持ってきてくれた。

私は爽やかな風味を楽しみながら、元来た道を戻っていくのだった。



私を含め十人ほどの人が同じ部屋の中で各自テーブルを前に椅子に座っている。和風の料理のフルコースが次々と運ばれてくるのをただ食べていくのだがとても美味しかった。なんの食材を使っていたのか、どんな料理だったのかなどはよく思い出せないけれどとにかく美味しかったことだけは覚えている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る