第5話 あざとかわいい

「それじゃあ話を整理しようぜ」


 アルの話を纏めるとこういうことだ。

 ・人間の乱獲によって世界がヤバい(一万年後)

 ・アルの教え「必要な分だけ狩って、自然に感謝しようね」を広める

 ・俺はアルの使徒として好きに生きていい


 ぶっちゃけ、特に難しいことではない。というか、こんなにユルい制約で大丈夫なのだろうか。

 俺じゃなくてもいいんじゃないかって気がしてきた……。


「ボクは狩猟神なんだけど、他にも様々な権能を司る神々がいるってことはわかる?」

「ああ、それは想像に難くないな」

「この世界の神々にはそれぞれ「英雄」と呼ばれる存在がいるんだけど、実はボクには「英雄」がいなかったんだ」

「狩人の神なら英雄の一人や二人いるんじゃないのか?」

「狩人として力のある人間が戦争やスタンピードで活躍することって珍しくないんだけど、でもそれは「狩猟」で活躍したというより「いくさ」で活躍した人間ってことになって、戦の神の領分になっちゃうんだよね……それに狩人っていうのはあくまで職業だから」

「あー……それじゃあ狩猟での英雄ってどういうことなんだ?」

「狩猟で得た糧の一部を、ボクに捧げ続けることで「英雄」として認定されるんだ。だけどキミの元居た世界の「お供え」と違って捧げたものは消滅しちゃうんだ。だから「英雄」と呼ばれるまで捧げ続ける人間はいないんだ」


 この世界の文明度は分からないし、魔物の強さも分からないが、命がけで手に入れたものを一部とはいえ無償で捧げ続けるより、その日の糧や金に換えたほうがいいと考えるのが普通だよな。


「そんなわけで、こういうものを用意してみた!」


 アルはさっき出した水晶玉と同じように、どこからともなく一冊の本を取り出して俺に手渡した。


「じゃじゃーん!世界まるごとドロップ図鑑~!」

「ほう!」

「お、食いついたね。さすがハクスラ好き!この本はね、キミが見つけたモンスター―今はスライムだけだけど―がページに追加されて行って、そのモンスターを倒したときに手に入れられるアイテムが表示されていくんだ」

「ほほう!」

「モンスターからドロップするアイテムっていうのは、このボク「狩猟神の加護」があると倒したモンスターが自動的に解体されて、低確率で手に入れることができる」

「ほほほう!」

「んで、どこでもいいから各地にある神殿でそのアイテムを捧げると、ポイントがもらえるようになっている。もちろんコンプリート特典もあるよ!!」

「ほほほほう!!」

「そんなわけで、ボクの英雄に……なってくれる?」


 アルは後ろ手に手を組み、覗き込むように俺の顔を窺った。


 なんだこの生き物、あざとかわいい!!!!!


「なるぅ!!!」


 即答だった。

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