第15話 クライブ神官長との対談
ステラとアンナの先導で孤児院へ戻った俺は、案内された部屋に荷物を下ろして一息ついた。
コンコンと扉がノックされる。
「わたしです、リュージさん、よろしいですか?」
「ステラか、どうぞ」
「クライブ父さんがお呼びです。神殿へ行ってもらっていいですか?」
「ああ、わかった。今すぐ行くよ……父さん?」
「あ、ごめんなさい。孤児院に戻るとつい……ここは実家ですから」
「クライブ神官長はお父さん、か」
そうなんです、と照れたように頬を掻くステラ。
「親離れできていないようで恥ずかしいですね」
「そんなことないさ。家族がいるっていうのは幸せなことだとおもう」
「ありがとうございます……」
ステラはコホン、と咳ばらいをひとつ吐く。
「神殿へ行けば近くの神官さんに声をかけてください。クライブ神官長の執務室へ案内してくれます。わたしはこれから孤児院の夕食の準備を手伝わなければいけないのでご一緒できませんが」
「ありがとう、大丈夫だよ」
階下でステラと別れた俺は、神殿にいた神官に声をかけ執務室に案内してもらった。
「よく来てくださいました、どうぞお掛けください」
「失礼します」
クライブ神官長に一言断り、応接ソファーに腰を下ろす。
神官長は自ら淹れた紅茶を手に対面に腰かけ、俺に紅茶をすすめた。
一口紅茶に口を付け、ほっと息を吐く。
「ずいぶんとお疲れのようですね」
「まぁ、今日一日でいろいろありまして……」
「お疲れのところ申し訳ないのですが、こうしてお呼び立てしたのには理由があるのです。どうかお話をお聞かせいただけないでしょうか?」
「なぜ、俺にそんなに
「貴方が、狩神様の使徒様の可能性があるからです」
「使徒ってわかりやすいものなのですか?」
「大地神や戦神の使徒であれば、信徒の数も多くなるので使徒を名乗る方々も増えます。信か偽かは別として。ですが、失礼ながら狩神様のようにそれほど信者の数が多くない神の信者であれば、わざわざ使徒を騙る利便もありません」
この世界にもやっぱりペテンや詐欺のような騙りはあるんだろうなぁ。
「騙りによって神罰が落ちることは無いのでしょうか?」
「神は、人間が思っているほど人間に関心を払ってはおられません。神々の目的は、世界の管理であって人間の繁栄ではありませんから。人間が世界の調和を乱すのであれば、神は躊躇なく人間を滅ぼすでしょう。私たちがこの世界で生きていけるのは、神々の慈悲なのです」
「なるほど……。俺は、クライブ神官長のご推察の通り狩猟神アルの使徒です」
「やはりそうでしたか」
「それで、クライブ神官長のお聞きしたい事とは、俺が使徒であるか否か、でしょうか?」
「いいえ、ここからが本題です」
クライブ神官長は深呼吸をひとつ、俺の目をまっすぐ見つめながら口を開いた。
「この町に、スタンピードが迫っている可能性が高いのです」
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