第13話 アビリティ習得
現在の奉納点は【108】、習得できるアビリティは色々あるみたいだ。
ヘルプを使用すると、アビリティは今までの本人の経験を反映する形で習得できるアビリティが変化するらしい。
魔法を聞いたことも見たこともない人間がアビリティで魔法使用に関するアビリティを覚えることはない。
今の俺が習得できるアビリティは射撃に関する【命中補正Ⅱ(40P)】【射撃威力上昇Ⅰ(20P)】【クリティカル確率上昇Ⅱ(40P)】などなど。
とりあえず言語関係のスキルを探してみると、以下の通り見つかった。
・【モルド大陸共通語理解(10P)】
・【全言語理解(100P)】
おそらくモルド大陸ってのが俺が今いる場所の名前なんだろう。
その場その場で必要な言語理解を取得するか、全言語理解で一括で取得するか……この世界の言語がいくつあるのかはわからないが、これから旅を続けることを考えれば、全言語理解を取るほうが後々得だろう。
ということで【全言語理解】を取得することにした。
取得を意識すると、奉納点が【108】から【8】へ減少し、ステータスにアビリティ欄が増えて【全言語理解】が記載されていた。
見回すとギルド内に張り出されているチラシの内容が理解できるようになった。
「低級ポーション大特価・2本で銀貨一枚・今ならもう一本」「迷子の子猫探しています・連絡はギルド窓口まで・お礼いたします」「この本を読めば君も今日からベテランハンター・金貨1枚で販売中」などなど。
「取得できたみたいですね」
「ん、ああ、バッチリだ!」
「それじゃ、申込書に記載しちゃいましょう、ベスとアンナはまだ時間かかりそうですし、わたしが書式を教えますから」
悪いな、いえいえ、と言いながらステラに差し出された申込書に目を落とす。
目の粗いパピルスみたいな紙だな。
備え付けの羽ペンを手に取り、記載項目に目を通すと、名前・出身地・職業・年齢を記載するようになっていた。その下には大まかなギルド規約が書かれており、最後に規約に「規約に同意しますか? はい・いいえ」と書いてあった。
ギルド規約は「ギルド内での私闘の禁止、1か月以内に必ず一度は納品を行うこと、町の人に迷惑をかけないetc.etc.」概ね常識的なことが書かれていた。
「名前は、リュージ、職業は狩人、年は20……っと、出身地なんて書けばいいんだ?」
「東の名もない村出身でしたよね?とりあえず東の村、でいいんじゃないですか?」
「そんな適当でいいのか?」
「犯罪歴が無ければ町に入れるわけだし、身分のある人が偽名でハンターやることだって珍しいことじゃないわ。そのあとの規約には、上の項目に偽りを書いちゃいけないって書いてないでしょ?」
「聖職者としてそれでいいのか?」
「わたしは孤児出身の卑しい身分だからね、難しいことはわかんないわ」
「自分を貶めるようなことは言わなくていい」
きっとステラは今まで孤児ということで苦労を重ねてきたんだろう。俺もその気持ちがわからなくもない。でもな、その自嘲するような笑い方は気に入らない。
ステラの頭に手を伸ばし、ぐりぐりと力を込めて撫でまわす。
「わっ!突然なに!?」
「ステラは俺の命の恩人だ。草原で渇いていた俺に、命の水を与えてくれた、な」
そういって目が合ったステラに、ニカッっと笑いかけた。
「よし、書き終わったぞ」
「そ、それじゃあ窓口に提出しましょう、ベスー!」
「はいはぁい、それじゃお預かりしますね~――お名前はリュージ、東の村出身、狩人で20歳ね。登録料は銀貨3枚よ」
「それならわたしが――」
「この後買取窓口でドロップ品を売りたいから、そこから引いてもらっていいか?」
登録料を払おうとしたステラを制して、ベスから割符を預かる。
「その割符を買取窓口にもっていけば、登録料を天引きしてもらえるわ。ギルドカードは明日の朝までにできているから、明日出かける前にこの窓口に寄ってね」
「りょーかい、それじゃまた明日な」
ヒラヒラと手を振るベスに見送られて買取窓口と書かれた看板の下へ向かう。
「ウサギの前足のこともありますから、登録料くらい受け取ってくれていいのに」
「町税に加えて登録料まで女の子におんぶにだっこじゃ、カッコつかないだろ?」
「……リュージは、十分カッコいいですよ」
ステラのつぶやきは、雑踏に紛れて聞こえなかった。
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