第4話 一万年後に人類は絶滅する!!
アルの説明によれば、この世界では自然界のバランスが徐々に崩れ始めているということだった。
この世界ではマナと呼ばれる魔力が満ちている世界で魔法が存在するらしいのだが、そのマナのバランスが崩れると、自然界の力でバランスを取り戻すために「揺り戻し」が発生するらしい。
「自然界のバランスが崩れる理由ってのは、人間が特定の生き物や魔物の乱獲ってのがほとんどの原因なんだ。狩猟神であるボクの教えは「狩った生き物やそれを育んだ自然に感謝し、必要以上は狩らない」ってのがメインなんだけど、その教えを無視する人間がここ千年くらいの間に徐々に増えてきてね」
千年……
「このままだと一万年後くらいに全人類が揺り戻しで死滅しちゃいそうなんだ」
「一万年って……」
「神のスパンで言えば一万年なんてあっという間だよ」
それでね、とアルは続ける。
「魔物を必要な分だけ狩ったり、増え過ぎた魔物を適度に間引くってのが必要なんだけど、絶滅するまで狩ったりしたら生態系が崩れるってのは理解できるよね?その崩れた生態系を元に戻すために発生するのが揺り戻しなんだけど、わかりやすく言えばダンジョンの
「
「生態系が崩れ始めた場所っていうのは基本的に、マナに偏りができるんだ。これは人間に説明しても難解すぎるから「そういうもの」として考えればいいよ。それでそういう場所にはダンジョンができて、ダンジョンが吐き出すマナがその場所に補充されるんだけど、補充されるマナより消費されるマナが多いとダンジョンはその中に抱えた魔物ごと一気にマナを吐き出すんだ。ダンジョンは生態系を崩された人里近くにできやすいから――」
「近くの町が、吐き出された魔物によって滅ぼされる」
「そういうことだね。人間が増えるよりもスタンピードによって死ぬ人間が増えれば、人間はいずれ滅びることになる」
結局のところ――とアルはため息を吐いた。
「人間たちが私利私欲のために魔物を狩りすぎると、その魔物によって自分たちが滅ぼされるんだ。ボクは狩猟神だから狩猟を行なう人間に信仰されなければ存在ができない。ボクは、自分が消滅したくないから人間たちを守ろうとする、浅ましい神なのさ」
アルは俺から視線を外して自嘲気味に笑った。
俺は立ち上がり、膝についた草をポンポンと手で払う。
「それで、俺はアルの使徒として何をすればいいんだ?」
「ボクの話を受けてくれるのかい?」
「自分のことを浅ましいって言ったけど、誰だって死にたいわけじゃない。俺は自分でも気付かないで死んじまったみたいだけど、アルはそんな俺にこの世界で生きるチャンスをくれたんだろ?死にたくないから助けてくれってそんなもん、当たり前の感情じゃねぇか」
そう言って俺はアルの頭をポンポンと撫で、ニカっと笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます