狩神の使徒 ~ハクスラFPS好きプレーヤーの異世界攻略記~

てろめあ

プロローグ 0

 午後九時を少し回った時間帯、一日の仕事を終え一風呂浴びてから軽い夕食をとった俺は、ハイボールの缶とローストピーナッツが盛られた皿を片手に、数年前のボーナスで少し奮発して購入した高級ゲーミングチェアに腰かける。


「一日の終わりはやっぱりこれだよな」


 VRヘッドセットを身に着け、ゲーム機の電源を入れるとホームメニューが起動し、購入してから毎日欠かさず遊んでいるハクスラFPS・VRゲーム「Devastation world」を起動する。


 このゲームは荒廃したヒャッハーな世界で、トレジャーハンターとなったプレーヤーがより強い武器や装備品を求めてモンスターやならず者たちを倒したり、ダンジョン探索をしてよりレア度の高いドロップ品や装備を集めるという、RPG要素やレベル、スキルツリー概念のあるFPSゲームだ。


 発売からすでに5年以上経っていることもあり、オンラインプレイヤーも一時期に比べてかなり減っているとはいえ、当時はFPSゲームにRPG要素のあるゲームとして画期的なゲームシステムだったのを覚えている。


 発売してから毎日プレイをし続け、すでに99周クリアしており、レベルはとっくに100レベルでカンストしているし、スキルツリーは最適解で開放済み、装備も最強装備を揃え終わっている。それでも俺はこのゲームが大好きで、一日の終わりにこのゲームをプレイすることが欠かせないルーティーンになっていた。


 今日は記念すべき100周目のラスボス戦。戦場はマグマ溢れる火口の中、少ない足場を頼りに竜を模したラスボスの吐く炎やプレイヤーの背丈よりも太い尾の振り回しを躱しつつ、遠距離はスナイパーライフルやロケットランチャー、近中距離ではアサルトライフルやハンドガン等を駆使して巧みにボスのHPを削っていく。


 はっきり言ってしまえば、100周目のラスボス戦なんて作業でしかないが、作業と化すまで狩りつくしたラスボスに対してある種の万能感を得ていた。


 ラスボスの弱点に最後の一発を叩き込むと、まばゆい光と共にラスボスは爆発四散し、大量のクレジットと色とりどりのレアリティの装備をまき散らす。


「100周目のエンディングか~、セリフも覚えちゃったし正直見る必要は無いけど、記念すべき100回目ってことで――」


 光が収まり、エンディングシーンが始まる――はずなのだが


「……どこだここ?」


 目の前には低木が疎らに生えた草原が広がっていた。

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