第1話 異世界転移のFPSプレーヤー

「やあ、こんにちは」


 草原で呆けていた俺の後ろから不意打ちで声がかけられ、ビクっと肩が上がる。


「あはは、そんなにびっくりしなくてもいいじゃない!」


 振り返った俺の目に映ったのは、身長150センチくらいの小柄な少女の姿だった。ツインテールに結んだ、薄紫色の長い髪の毛、褐色肌のすらりとした手足、意志の強そうなやや釣り目気味で緑色の瞳をしており、所々毛皮をあしらった皮鎧のような軽装に、象牙のような素材で作られた大ぶりの弓と矢筒を背負っている。


「君は……Devastation worldのNPCかな?」

「キミはここが、さっきまでプレイしていたゲームの続きだと思っている。間違いなかな?」


 発売してから5年以上経っているゲームだ。新しいダウンロードコンテンツの配信など無かったし、アップデートも数年前から行われていない。やはり何かしらのバグなのだろうか……。


「ボクはゲームのキャラクターでもないし、ここは君がプレイしていたゲームの中でもない。ここはね、いわゆる異世界というやつさ」

「は……?異世界って、何を言っているんだ?」

「いやーVRゲームってすごいよね!君たちの世界の空想力・科学力ってある意味変態過ぎて感心しちゃうよね!」


 もういいや、さっさとログアウトして再起動しなおそう。まさか100周目にしてこんなワケのわからないバグが眠っているとは……。


「ここは現実だよ。嘘だと思うなら深呼吸して、顔に触れてみるといい」


 思わぬバグに直面して若干混乱している。少女の言葉に従うわけではないが、とりあえず深呼吸して落ち着こう。


 スーーーッ


 深く息を吸い込むと、濃い草の匂いとかすかな土の匂いが鼻腔を突いた。


「エッホっ!げふっ、げふっ!……!?!?」


 どういうことだ!?VRゲームなのに草原の匂いを感じる!俺の部屋の匂いじゃ断じてない!

 慌てて顔に手を当てると、そこにはVRヘッドギアなど無く、俺の眉毛、皮膚の感触が返ってきた。


「こ、これって……」


「キミは異世界に転移してきたんだ!ボクがキミを呼んだんだけどね!!」

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