第19話 絡まれると思ったけどそんなことはなかった。

「おい新入り、俺たちを差し置いてステラとアンナとパーティーを組むとはどういう了見だ?」


 ガタイのいい強面のおっさん冒険者が、俺たちのテーブルへとやってきて、俺の肩に手を掛けた。

 ギリギリと絞るように力を入れてくる。痛い痛い。


「ちょっと、ハロルドさん!あたしがリョージを誘ったのよ!」

「黙ってろアンナ!いいか、ステラとアンナはここにいる俺たちベテラン冒険者の娘みたいなもんなんだ。どこの馬の骨だかわからないお前が二人とパーティーを組める資質があるかどうか、試させてもらうぜ」

「そう言うことなら、ぜひ指南願いたい」

「訓練場へ行くぜ、ついてきな」


 ハロルドと呼ばれた冒険者の後について、ギルド裏手の訓練場へ向かう。


「リョージ!」

「大丈夫だステラ。ダンジョンに潜る前のポジションの確認に丁度良い。二人もついてきてくれ。俺の戦闘スタイルを教えておく」

「いい心がけだ」


 ニヤリと笑って下手なウィンクを飛ばすハロルド。

 どうやら周囲の嫉妬の視線に気づいて、代表して憎まれ役を買ってくれたようだ。

 ステラとアンナを本心から心配しているらしい。


 訓練場に到着したハロルドと俺は互いに距離を取って対峙する。

 ハロルドは訓練場に立てかけてある刃引きした大剣を手に取った。


「そんじゃ、お前さんの獲物を見せてもらおうか」


 俺はインベントリから狩猟神の魔導銃アルテミスガンを呼び出す。

 今の形態は六連装リボルバーだ。


「魔導銃か……言っちゃ悪いが、そいつは使武器だぞ」

「この魔導銃は特別性だから、心配ない」

「なら、そいつは実践で証明してもらおう――かっ!!」


 言うや否や大剣を振りかぶって切りかかろうとするハロルド。

 対抗して俺もすかさずハロルドの太腿に向かって弾丸を打ち込む。

 踏み込んだ右足とは反対側の置き足である左足を狙った弾丸は、ハロルドが体ごと捻る様に地面に転がることで回避された。


「合図もなしに不意打ちなんて卑怯よ、ハロルド!!」

「モンスターは一々合図なんてしねぇ!!新入りだってキッチリ対応して見せたじゃねぇか!問題ねぇよ!」


 激昂するアンナに対して怒鳴り返すハロルド。ステラは俺を気遣うように視線を向けてきたが、俺はステラに問題ないと頷いて見せた。


「ずいぶんとえげつない狙いをしてくれるじゃねぇか」

「魔導銃は接近戦には向かないからな。相手を近づけない事が鉄則だ」

「なら、今度はそっちから攻撃してみろ。先手を取るのもまた魔導銃の鉄則だろ」


 彼我の距離は20メートル程度。

 打ち込めて3発といったところか。ならば……。


 一発目、胴体を狙った弾丸は、余裕をもって躱され、一気に距離を詰められる。

 二発目、顔面を狙った弾丸は、大剣を盾にすることで弾かれた。


「こんな体たらくじゃ、ステラとアンナは任せられねぇな!」

「くっ!」


 大剣を振りかぶったハロルドの顔の横を掠めるように三発目の弾丸が抜ける。


「これで仕舞いだっ!!」


 振り下ろされた大剣は半ばから溶け落ちたように無くなっていた。


「なっ!?」


 動揺するハロルドのこめかみに銃を突きつける。

 俺の勝ちだ。


「ギリギリだったが、俺の勝ちでいいか?」

「ああ、合格だ」


 本当に危なかった……。


「にしても、一体この大剣に何をしたんだ?」

「俺のスキルだ。溶解コロッシブの属性を弾丸に付与して大剣に当てたのさ」

「弾丸に属性付与できるのか。そりゃすげぇ」

「普通はできないのか?」

「弾丸をバラシて一発一発に付与魔法をかければ可能だが、お前の場合は試合中に咄嗟に付与しただろう?そんなこと普通はできねぇよ」

「なるほど」

「まぁ、それなら汎用性の高い遠中距離アタッカーとして十分仕事できるだろうさ。ステラとアンナをきっちり守ってやんな」

「わかった。それと、ありがとうな」

「あぁ?」

「他の冒険者に絡まれる前に、俺を試してくれたんだろう?」

「そりゃ、お前の勘違いだ。まぁでも礼は受け取ってやるよ、リョージ」


 ステラとアンナが駆け寄ってくるのと入れ替えに、ハロルドは手を振りながら訓練場から立ち去って行った。


 カッケーな、あのおっさん。

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狩神の使徒 ~ハクスラFPS好きプレーヤーの異世界攻略記~ てろめあ @agata-syuji

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