第8話 スキルスクロール

「まじかー……」


 アルは地面に落ちていた巻物を手に取り、茫然と呟いた。


「スライムの超激レアドロップ、収納のスキルスクロールだよこれ」

「収納?」

「アイテムボックスとかインベントリって言えばわかりやすいね。スライムは消化しきれないものを体内に取り込んでゆっくりと消化する習性も持っているんだけど、これはそのスライムのスキルを習得できるようになるアイテムだね」

「どのくらいの確率で出るものなんだ?」

「それこそ、百万分の一とかそんな確率だよ」

「まじかー……」

「もうっ!マネしないでよ!」

「はははっ、ごめんごめん。じゃあとりあえず初ドロップ品ってことでそれを捧げるよ」

「いや、これはキミが使うんだ。キミの戦闘スタイルは銃による遠・中距離射撃がほとんどだろう?このスキルには自動取得効果もあるから、敵を倒せば一々ドロップ品を拾い集める必要は無くなる。ボクはキミに英雄になってもらいたいからね、効率よくドロップ品を集めるためにも必要だろう」


 それに、ともう一つのドロップ品に手を伸ばす。


「初ドロップならこっちの「スライムの粘液」で十分さ」

「じゃあそうさせてもらおう」


 スライムの粘液を捧げると念じると、アルが手にした小瓶は光となってアルへと吸い込まれていった。


【「スライムの粘液」を狩猟神アルへと奉納しました。実績「初めての奉納品」「スライムのドロップ品1/3」が解放されました。実績1「神託(ヘルプ)」が解放されました】


 脳裏にメッセージが流れる。


「今のは……」

「システムメッセージってやつさ。世界の声とも呼ばれている。実績には様々なものがあって、特定の行動達成とか一定のレベルに到達することで開放されていくよ。詳しい内容は開放してのお楽しみってやつだね!」


 さて、とアルは居住まいを正す。


「ボクはそろそろ天界に戻るよ。スキルやこの世界の常識については開放されたヘルプを見ればわかると思う」


 アルの体がうっすらと光り始めた。


「ボクには英雄が必要だっていったけど、キミはボクの言葉に捉われず、好きに生きてみるといい。時には迷ったり思い悩んだりする事もあるだろう。それでもボクはいつでもキミを見守っているからね」

「……」

「まずはこの近くの町に行ってみるといい。この街道を東へまっすぐ道なりに進めば、半日もかからずに着くだろう」

「また、逢えるか?」

「もちろん!実績を積み重ねて、神殿でお祈りすれば短い会話程度ならいつでもできるようになるしね!」

「そりゃ結構」

「ふふっ!キミの旅路がどんなものになるのか、楽しみにしているよ!精いっぱい楽しんで、精いっぱい生きてくれ! それじゃあ、またね!!」


 アルの体が一際輝き、次の瞬間にはすっと消えた。

 彼女が立っていた場所には、スキルスクロールが一本落ちていた。

 俺はそれを拾い上げ、誰ともなしに呟いた。


「それじゃあ、行こうか! 東へ!!」

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