第10話 その時は突然やってくるのか②
「ディフェンス!ディフェンス!」
「いけー!河野!」
「新太ー!」
ダムダム・・・ッ!
「「「おぉ!」」」
新太の得意なクロスオーバーで一瞬にしてディフェンスを抜き去る。そこからスリーポイントをうてるように準備完璧なチームメイトに中からパスを出す。俗に言う、ペネトレイトしてからキックアウト。
そしてスリーポイントシュートがリングの中へ吸い込まれ───。
「「「おぉおー!!!」」」
その日の会場はたかが一地区の新人戦初戦とは思えない程に熱狂していた。
試合が終わってみると、
上宮中学86点
涼成中学42点
河野新太を中心に完璧な連携で涼成中学を圧倒する上宮中学。新太はこの試合31得点をマーク。強いバスケで圧勝した。
「いやぁ、やっぱり河野新太はすごい!」
「あれで中1だぞ!?」
試合が終わった後も観客たちの話題は新太の活躍であった。それは、観客だけでなく、上宮中学のチームメイトも同じで、
「やっぱ、流石だよ新太ー!!!」
「おわっ!なんだよ、お前だってスリー決めたじゃん!」
更衣室の中は初戦突破に大盛り上がりである。昨日は気合いが空回りしてダメになるのでは・・・、と懸念していた1年生も、新太の活躍で前半こそ大きな活躍はなかったが、リラックスできた後半はスリーポイントを中心に大きな活躍を見せた。
「いや、それでも新太の活躍が勝利に大きく貢献したのはチーム全員の共通認識だぞ!」
2年生の先輩たちも、自分達も活躍していたのに、新太のことを大きく誉め、頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
その日の帰りは皆でコンビニで買い食いをして帰った。本来は禁止されているのだが、試合の帰りは皆で最寄り駅近くのとあるファ○マに寄るのが伝統になっているのだ。
新太も焼き鳥を1本だけ買っていた。ちなみにお気に入りはタレのかわである。
そうして一通り試合の熱が冷めるのを待って解散する。
「じゃあまた明日な~!」
「12時集合だから遅れるなよー!」
「おう、また明日。」
そんなやり取りをして、それぞれの帰路に別れる。まぁ、初めての公式試合で勝利したのだからテンションMAXになるのも無理ないが、どうもうちのチームは感情の起伏が激しい気がする。そんなことを考えていると、すぐに家についてしまって、問に対する解を得られないまま、頭は自然と今日の夕飯へと切り替えられるのであった。
「ただいま~」
「おかえり!お疲れ様。すごい活躍だったね!」
いつもどうり笑顔で出迎えてくれるレン姉を見て、何だかピンッと張っていたものが切れて、ガックリと疲労が襲ってくる。
「おわっ!大丈夫?」
「・・・平気、ちょっと疲れただけ。」
「早くお風呂入ってきな。上がったらマッサージしてあげる!」
「はーい。」
玄関で寝っ転がっても意味ないので、とりあえず風呂へ向かう。
─────
「ふぅ~。」
やや熱めのお湯に浸かり、体をほぐせた最高の気分で風呂を上がると、テーブルにはオレンジジュースが準備されていて、
(完璧だよ。流石レン姉)
「キラーン!」
俺の心を読んでか、ドヤ顔のレン姉がポンポンと大きいソファに座れと合図する。
「うっは!」
実はレン姉はマッサージがメチャクチャ上手いのだが、上手いのだが、セクハラ癖というか、所々際どいところをわざと攻めてきたりする。
「ふふっ。最近はマッサージさせてくれなかったんだから、お仕置きよ。」
レン姉の表情がいつもの優しいお姉さんではなく、変態おじさん化してる!?
「レン、姉・・・ふぁ!」
「ふふふ、逃がさないわよ!」
「ふぁああ!」
と際どい、しかし最高のマッサージの後
「ねぇ、新太・・・。」
マッサージの体勢のまま俺に馬乗りになってぴったりとくっついてくるレン姉が真面目な
トーンで耳元で話始める。
(体勢が体勢じゃなければ、真面目とわかるのだが・・・。)
「・・・私、」
「!?」
(まっまさか!レン姉!?)
そりゃあ中学生男子が美女にこんな体勢で、そんなトーンで囁かれたら、思うことは1つしかない。
「・・・ぷっ!なぁに期待したのぉ~?」
と、一瞬であの真面目モードは吹き飛び、お腹を抱えて笑い出す。
「・・・ちっ!なんでもないのかよ!」
「いやぁ、新太の真っ赤な顔見たら話す気なくなっちゃったよぉー」
まだ俺の上で笑い続けるレン姉を睨むと、
「あぁ、ごめんごめん、夕飯すぐ作るからね~。」
そう言ってキッチンの方へ行っても、なお笑い続けている。
「ったく、なんなんだよ。」
本当は、何を言おうとしていたのか。新太は最後まで知ることはなかった。
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