第14話 空いた溝

「何してんだよレン姉。」

「ひゃう!」

声をかけると、謎の動くものから予想通りの声がして、金髪の美女が

「バレたか~」

と教室に入ってきた。


西園寺 エレナ

彼女はテヘッと舌を出しながら軽く頭を叩くふりをする。

物凄くあざといが、それを彼女がやると可愛いのは仕方ない。


「久しぶり新太!」

「─あぁ、久しぶり。」

休み時間の時はすぐに授業が始まったので特にあれ以上の会話はしなかった。と言うよりも、新太としては、したくなかった、と言う方が正しかったかもしれない。


「大きくなったねー!」

そう言って彼女は俺と目線を合わせようと背伸びする。

もともと身長がそれなりに高い方の新太と、女性の平均身長くらいの彼女では背伸びしたくらいでは目線は合わないのだが。


「ねぇ、今日家においで!」

「はっ!?いやいや、教師と生徒だぞ?ダメだろ。」

と明らかに正論を言っているのは新太なのに、まるで理解できないのか❓️マークが頭に浮かんでいる。


「ほら、お母さんも新太には最近会ってないって言うし、それに話したいこともたくさんあるし!」

「───。」

あぁ、何かわかった。


彼女は理解していない。


もう俺たちは昔のような間柄ではないとこを。


もう戻れないことを。


俺たちの間に空いた溝が、あまりに大きすぎることを。



「そうだね。最近おばさんにも会ってなかったから、挨拶しに行くよ。」

「うん!じゃあ7時くらいに来て!伝えとくから!」


彼女の笑顔に俺はどんな顔をしているのだろうか。


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