第15話 それぞれの気持ち

俺は西園寺 エレナが好きじゃない。

いや、勝手に一方的に怒っている。憤っている。何も言わずに消えた彼女に。


でも、エレナは気づかない。俺の気持ちには気付いていない。


彼女の笑顔を見たときに、俺は素直に喜べなかった。勝手に消えて、どうせ俺なんてどうでもいいんだろ?って、そう思っていたから。


どうせ彼女は昔の彼女ではないのだろう。


この理不尽な怒りと苦しみが、俺の余計な独占欲からきているかだろうか?俺にはわからない。


でも、わからなくても、わからないからこそ、俺は彼女と会いたくなかった。



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「大きくなったわねー!最近全然見かけなかったから懐かしいわ!」


家にお呼ばれして、着替えてからお邪魔すると、おばさんがテンションマックスで迎えてくれた。


「格好よくなってー!体格もすっかり男の子ね!」


俺とおばさんが会っていなかったのは、単純に俺がこの家の近くを避け続けていたからだ。それでも見かけることくらいはあったけれど、こうして話すのは本当に久しぶりだった。


「もう!お母さん、新太も困ってるから!ほら、上がって。夕飯の支度できてるから!」


「おじゃまします。」


家の中は俺の記憶にある頃からあまり変わっていない。新しい家具がいくつか置いてあるが、大体は懐かしさを感じるものだ。


リビングに入ると、キッチンの方から良い香りが鼻をくすぐる。


「カレー?」

「ぶー!カツカレーだよ!新太が好きだったやつ!」


エレナが、教師をしている大人には見えないはしゃぎっぷりでお皿に盛り付けをし始める。


「新太くんが来るからってエレナ張り切って作ってたのよ~。」

「ちょっ!お母さん!?」


ハイテンションの二人はとても楽しそうで、その姿は昔のままのようだった。まるで俺だけが取り残されたように、一人冷たく小さく殻にこもっていた。

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超絶美人な幼馴染は英語教師 MASAMUNE @masamune-sanada

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