第12話 レン姉?
ピザ屋にデリバリーの電話をしたあと、まだ、レン姉を来ないからとテレビを見ながらダラダラと午◯ティーを飲んだりしていた。頭の中は、明日の試合でも、くだらないバラエティー番組なんかでもなくレン姉の進路についてで埋まっていて、テレビの音が鬱陶しくなって、すぐに消してしまった。
大学とか就職とか、正直自分にはわからない。今まで考えたこともなかった。でも、もしかしたらレン姉が遠くに行ってしまうかもしれない。そう考えると、今の生活が今更ながら、当たり前のものでないことに気づいた。
「どうするんだろうな・・・。」
自分らしくもないが、胸が締め付けられる。それがどういう感情なのか幼い新太にはわからない。ただ、何となく苦しいのだ。
そうこうしていると、ピザの配達の方が早くに来た。多目に頼んでしまったから、積み上げた箱が崩れないように慎重にリビングに運んでおく。
「遅いな。」
レン姉って長風呂???なんて考えていたら、すぐに鍵を開けて扉の開く音がした。
「ごめーん遅くなっちゃった!」
レン姉のいつも通りの姿を見たとき、進路のことなんて、消えてしまった。
「「いただきます。」」
─決勝戦─
観客動員数は今大会最大で、満員に立ち見までいるほどだ。しかし、そのほとんどが、河野 新太の活躍に期待していても、上宮中学が勝つとは考えていなかった。
所詮は新太が何点取れるか?それだけである。
「ここにいる全員が俺たちが勝つなんて思ってもないだろう。」
2年生キャプテンはどこか挑発的な笑みを浮かべている。
「だから、俺たちが勝って会場を黙らせようぜ。」
その笑みは、どうやら新太も含めてチーム全員、顧問も同じようだ。
新太も今日の状態はすごく良かった。軽くて飛べそうだ。
「行くぞっ!」
「「「オォォオ!」」」
会場は騒然としていた。
東陰中学が勝つ。これは共通認識だった。上宮中学がどれくらい太刀打ちできるか?注目はそこだったのだが・・・。
上宮中は新太を中心に高速でパスを回し全国クラスのディフェンスをあっさりと崩し、中でも外でも自分達の攻撃をしていた。
キャプテンからパスをもらった新太がドリブルで斬り込んでディフェンスを引き付け、フリーになった同級生の恭也にパスを出す、それになんとか反応したディフェンスも、恭也がタップパスでキャプテンに回したら、完全に置いていかれ、悠々とスリーポイントを決める。
外で高速でパスを回し、ディフェンスの隙をついて中へパスを入れて決める。
新太が自分で斬り込んで、今度はパスじゃなくレイアップシュートを決める。
上宮中学はディフェンスも優れていた。
全員が確実に連携をとってバランスを崩さない。
斬り込んできた相手を囲む、外にパスを出しても、そこには新太が持ち前のスピードで先回りしている。
研究に研究を重ねた末にできる
“先読みディフェンス“
試合終了のホイッスルが鳴る
気づけば試合前の予想は完全にハズレ
東陰中学 74点
対
上宮中学 92点
「「「おぉー!おー!」」」
上宮中学の勝利が決まったとき、会場の熱気は頂点に達した。
「お疲れ様!」
あのあと、顧問も含めて部員たちで盛大に打ち上げをやり全員の活躍を労ったあと、クタクタな体を引きずるように家に帰りつくと、笑顔のレン姉の姿があった。
「ただいま。」
どっと疲労がのしかかる。
「おかえりなさい。」
そんな俺を優しい笑顔で見るレン姉の雰囲気がいつもと違う。まるで何かを記憶に刻み込むような、この瞬間を忘れないようにしているようで、でももう体が動かない俺は、そんなこと気にせずに今日を終えてしまった。
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