第5話 揺れる3年1組

「おはよう新太!」

「!?」

今なんて言った?新太って、俺の名前を呼んだ、笑顔を見せた、もう2度と会わないと、会えないと思っていた人が、今なぜか、俺の教室にいる。英語の教科書と出席簿とプリントを抱えて。

「えっ?知り合い?」

「なんなんだ?」

「あんな美人とアイツが?」

「どういうことだ?」

教室と彼女の取り巻きたちが動揺を見せる。それもそのはず、だって当事者の俺が誰よりも驚いているのだから。

「あれ?忘れちゃったかなぁ?」

違う。忘れるはずない。だって彼女は──。

「幼馴染を忘れるなんて酷いなぁ。エレナだよ!」

そう言って彼女は一歩俺に近づく。

そうだ、エレナ、西園寺エレナ、幼馴染で物心ついたときから一緒に居て、向かいの家に住んでいた、俺が高校に上がる前に、何の前触れもなく居なくなった奴。

「お、おはよう・・・。」

何とか出た言葉も掠れるほどに、それは衝撃だった。


動揺と静寂の教室に始業のチャイムだけが鳴り響いた。

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