素晴らしい作品は、どこにあっても必ず輝く。読む者を惹きつけて離さない。

ものを書く人。自分の書いたものが本になる場面を夢見ている人。
そして、本を愛する全ての人に是非読んで欲しい、大変刺激的な作品です。

大手出版社である丸山出版の主催するコンテストで、作品『リベンジ』が大賞を受賞した新人作家、広川滉太。作品の書籍化に際し、レーベルのカラーに合わせるために編集者から「ノンストレスのライトノベル」という方向への強引な改稿を求められる。
コンテストの審査の際に広川の作品を強く推した編集者の宮本章は、広川の作品の出版のためにできる限り力を尽くす。しかし、傲慢で強引な編集長らに阻まれ、それを叶えることができなかった。
大賞受賞作は書籍化を確約されていたにも関わらず、『リベンジ』は再三の改稿作業の末、結局書籍化を打ち切られ——。
その後広川は、丸山出版の運営する小説投稿サイトからアカウントを消し、消息を絶つ。その事態に強く責任を感じた宮本は、丸山出版を辞職することを決意する。

——若くして大手出版社を辞職し、北海道の祖父母が営んでいた小さな書店『ミュゲ書房』を継いだ元編集者と、突出した才能を持ちながら苦い思いを味わった若い作家。彼らの熱い「リベンジ」が、ここから始まります。

「作品を書く」ことと、「その作品を売る」ことの間に広がっている、巨大な溝。書く側の心情と、それを売る側の思惑。そのずれがいかに大きいか。
そして、作家と出版社がどういう「力関係」で仕事をしているのか。
これらの驚くべき現実を、この物語は非常に詳細に描き出しています。
心身をすり減らして物語を書くことの重み。大切なメッセージを読み手に届けたいという作家の願い。その価値を誰よりも理解し、作家とその作品を大切に取り扱うのが出版社、編集者の仕事のはずでは?……そんな強い疑問が胸に浮かびます。

そして、この物語が最も強く訴えかけていることは——
素晴らしい作品は、どこにあっても必ず輝く。たとえどんなに目立たない世間の隅っこに置かれていたとしても、必ず読む者を惹きつけ、やがて必ず多くの人を引き寄せる。そういう真実です。
そんな強力なメッセージが、物を書く人間にとって何よりも大きなエールとなって胸に響きます。

作家と作品への深い愛情を決して手放すことのなかった元編集者と、困難や妨害に決して屈することなくパワフルに前進していく作家の、胸のすくようなリベンジの物語。
一人でも多くの方に読んでいただきたい、素晴らしい物語です。

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