本当に難しいこと

 『本当に難しいのは見つけることではない……手放すことだ』……かのベゼスタ・ソフトワークスのテレビゲーム『フォールアウト・ニューベガス』における傑作シナリオ、『デッドマネー』のナレーションである。
 むろん、最終核戦争から二百年ほど経過したアメリカ合衆国での物語と、現代日本のささやかだが貴重な恋愛を描いた『今日に捨てていく(以後、『本作』と呼称)』では全く関係がない。
 にもかかわらず、両者には奇妙な類似性を感じる。
 それは、本作の主人公達が苦悩し葛藤しつつも題名通りの行為を目指すからだ。まこと恋愛とは見つけるよりも捨てることがはるかに困難であり、本作はその苦味と解決を十分以上に描ききった傑作といえよう。
 『デッドマネー』では、二百年前から続く男女の因縁にプレイヤーが(間接的に)巻き込まれていく。
 本作では、生まれて間もない頃から続く主人公達の認識の混ざり合いに読者が没入していく。
 比較他分野恋愛学(?)としての稀有なサンプルであると共に、人生で真に貴重なものを垣間見せてくれる本作、最後まで目が離せない。
 必読本作。

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