第25話 Day After Tomorrow


俺は万年生きるらしい。ということは一万年の間俺は生きる苦しみを享受しなければならないということだ。だがそろそろ終わりが近づいているみたいだ。お日様が日増しにデカくなってきやがる。

暑いな。もうこの甲羅を脱ぎ捨てたい。

死ぬほど暑い。死んだ奴には申し訳ないが死にたいくらい暑い。最後の最後にまでこんな苦しみだ。勘弁してほしい。

ヤツはもうとっくに鬼籍に赴いた。

最後の言葉はなんだったかな。思い出せない。その頃のヤツらはもう皆んないやしない。ついこの間まで鶴どもがいた気がしたけれども今はもう俺たち亀ばかりだ。

亀社会は退屈だ。する事といえば甲羅干しくらいだ。退屈すぎて毎日首をすくめるばかりだ。あの頃が懐かしい。

だいたいなんでヤツと競走する事になったんだっけかな。俺の周りをピョンピョン跳ね回って煩わしかったのを覚えている。

「勝負だカメ君」なんて言っちゃって…まぁ俺にとっては勝敗なんてどうでもよいことだった。勝って一日浮かれたって明後日には皆んな忘れる。明日の後なんてみんないっしょだ。そう思ってた。

ヤツは途中昼寝していたらしい。何の戦略か余裕ぶっこいてる。きっと後から追いつける自信があったのだろう。相手や周りがどう考えようと俺の知ったこっちゃない。そういう意味では俺は至極マイペースだ。

「カメさん、長生き出来てうらやましい」ほっとけ。ほっとけ。オマエら皆んなほっとけ。あの世でほとけ。何を言われようとこの世でおとぼけ。そういう生き方してきた。

今日もただいい天気だ。明日も明後日も。悲しいほどにな。

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