第11話 囁く夜
「ジャックダニエルはバーボンじゃないのよ」
グラスの中の氷をゆっくりと溶かす様に彼女は琥珀色のため息を注いだ。
しどけない夜の緩やかに回るターンテーブルにはカーラ・ボノフの古いアルバム。
「“囁く夜”が一番好きなの」
細い指先がグラスの縁を滑らせる。
カランという音は今夜、月まで届くのだろう。
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