キャラクターとは作家の分身――無垢な純愛ラブ・ストーリー

幼少時代の無実さと、目覚め始める恋心の交差点にたかしゃんさんの「この世界に鍛冶屋はいらない」はある。主人公のユウトとヒロインのサラは、無邪気に社交ダンスの真似事をして、二人でちょっと赤面しながらも水浴びして、まだよく知らないなにかを気にしながらも同じベッドで寝ている。これはまさに、お互いのことを異性として好きになり始めている子供たちの純愛ラブ・ストーリーなのではないだろうか。もしあなたがそのような甘い世界を望み見るのなら、もうこのレビューを読み続ける必要はない。上のボタンから早速第一話を読み始めるべきだ。

しかし「鍛冶屋はいらない」はラブ・ストーリーだけではない。テーマである純愛を引き立てるファンタジー世界を作り上げ、アクションがあり、キャラクターたちは冒険し、成長する。また、これは僕がたかしゃんさんの(自称)ファンクラブの会長であるため知っていることだが、これからのプロットも細かに練られている上、タイトルやこれまでの伏線にも深い意味が込められている。これを知らされた時、僕は正直唸ってしまった。

主人公のユウトは最初はか弱く、女々しい。ユウトは物語の中で成長するが、得るのは肉体的な強さではなく、他人を守るための勇気や、ヒロインと繋がるための自信だ。それが現実でも異世界でも本当の強さなのではないだろうか。人は残念ながら争いを好む。争って、相手を打ち負かすのはかっこいい。しかし、他人を思い、優しくするのはまた別の、そして多分一番大切な強さだ。そのことをたかしゃんさんはこの物語を通して読者たちに語ろうとしている、と僕は思う。だからお勧めする。穏やかで、優しい、そしてか弱く、無垢で純粋な物語――いや、人生の視点――を求めるなら、あなたは「この世界に鍛冶屋はいらない」を読むべきだ。

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