はみだして、なじめ

 財布から万札を一枚だけ抜くと、シャワーを浴びる男を残して部屋を出た。ビルに反射する日差しが眩しかった。


 道端の空き缶を蹴り飛ばすと、カラスが鳴いた。膨らんだガムがパチンと割れた。


 タバコの煙も、アルコールの匂いも、深夜のB級映画も、別に好きではなかった。

 男のキスも、優しい言葉も、背中を撫でる固い手も、別に嫌いではなかった。


 生きている意味などわからない。

 くだらない人生かもしれない。

 でも、それがどうした。


 遠くから電車の音が聞こえる。昨日と同じ日常が始まる。明日も同じかはわからない。たぶん、同じだ。でも、それがどうした。



 死んだみたいに生きるより、マシだろ?

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