ニシキカムロ

花火の思い出は、夏の終わりの思い出だった。


この街に生まれて二十五年。

この街を離れて七年。

またこの日がやってきた。


夜空を埋め尽くす黄金色の花火を見ると、切なさに駆られるようになったのはいつからだろう。


この街を出てから?

生きることは耐えることだと知ってから?

夢が叶わないものだと心のどこかで悟ってから?


あなたとの思い出が、かけがえのないものだったと気づいてから?


あの頃に戻れないことは知っている。

前を向くしかないことはわかっている。


でも、一年のうちでこの日だけは、涙を抑えることができない。

明日からまた、あの無機質な街で頑張ろう。そう誓う。


だから、今日だけは――。


滲んだ視界が光の粒で満ちていく。




今年も錦冠にしきかむろが、故郷の夜空を染め上げる。


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