終電

 全部嘘でもいい。そう思った。


「あなたは、優しいからね」


 終電が駅に滑り込む。賑やかな人の波が、寄せて戻ることのない冬の海のように車両に飲み込まれる。


 彼女は少し寂しそうに手を振った。ドアが閉まり、俺はホームに一人取り残される。


 その言葉には嘘がない。そう信じさせるあなたの優しさに、俺は憧れているのかもしれない。

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