牛とマンボウ
「先輩でもそんなふうに感じるんですか?」
俺から見ると、先輩はいつも堂々として自分を持っており、何事に対しても焦らず対処しているように思えた。それにひきかえ、俺はよく自分を失い、そこには周りから見た自分しかいなくなるときがあった。だから、俺はそんな先輩に憧れていた。
「もちろん。人間だからな。牛やマンボウはわからないが、人間はそういうことで悩む生き物だ」
「牛やマンボウ?」
「ものの例えだ」
先輩はそう言うと、まるでずっと先の未来を掴もうとするみたいに、空に向かって手を伸ばした。
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