第3話 奥編 moglie 1:さぁ始めるわよ! Esco !
美少年よ、絶対美少年!
違ってたら、自殺してでも、そうなるまで繰り返す!
固い信念を胸に、ゲームへ向かう。
機器は、夫と一緒に設定したんだから、これでいいよね。
接続画面出てるし、問題ないよね。
じゃあ、出発~
世界が泳ぐ!
奔流が取り囲み、全てが吸い込まれていく。
これよ! これ! これがゲームよ!
光になりながら叫んでいた……ような気がする。
「いらっしゃいませ、ようこそ我らが世界へ」
明るい緑色の世界で、元気そうな声がする。
「こんにちは! ゲームをしに来ました」
「なかなかアクティヴな方ですね。歓迎いたします」
淡い雲の中に薄く影が見えて来る。
「歓迎って言いながら、姿も見せないのね」
「いやいや、見えるような見えないような感じにしているのは、仕様です」
「なんだか丸っこいものが見えるんだけど」
「そうですね。私はボールの形をしています」
良く分からないけど、最初に出て来るんだから、ゲーム・ガイドだとは思う。
んで、聞いてみる。
「あなたは何? 私はこれから何をすればいい?」
ボールは応える。
「私は、新規の方をゲームへと誘導するガイドです」
やっぱりかぁ、いろいろ聞いてみよう。きっとゲームについて教えてくれるに違いない。
「あなたひとりでプレイヤーの接続に対応しているの? 大変だと思うけど」
「いえいえ、私たちはAIです。十数種類のタイプの違う受付がいて、プレイヤー毎に対応しています」
「なんでまたそんな面倒なことを?」
「えとですね。このゲームは人間研究をするために開発されたものです。そのため、私たちに対して、ユーザーがどのような反応をするのか、についてもデータを収集しているのです」
「また、個人情報流すの?」
「いやいや、そこは法律がありますので、統計データは公開されますが、個人が特定されるようなデータは公開されません」
「法律があればって、法律あっても破る人間いるでしょ。警察も裁判所も法律破る人間いるから、あるんじゃないの?」
「そこを言われれば、返答のしようがありませんが、弊社は法律に沿うようひたすら努力を重ねております」
まぁ受付係はそう言うしかないとは思う。
「さて、重要事項を説明しなければなりません」
「へぇ、ということは、普通のゲームと違うことがあるの?」
「そのとおりです」
と、ボールは丁寧に説明し始める。
キャラクタはひとつしか作成できない。
キャラクタが死亡した場合、全てが失われる。救済はあり得ない。
キャラクタが持っていた金銭、アイテム、スキル等は全て無くなる。
死亡後に再作成はできるが、以前のキャラクタと同じものはできない。何も引き継がれない。
「なるほど、一度切りの人生ってわけね。良く分かったわ。臨場感ありそうね」
「これに納得していただければ、あなたのキャラクタを生成することになります。よろしいでしょうか?」
「それではお願い、ボールさん。絶対に美少年にしてね!」
「わたしに、風貌を決定する機能はありません。これからシステムがあなたに色々な質問を投げ掛けることになります。回答の必要はありません。あなたの反応を見て様々なデータを総合判定し、相応しいキャラクタを生成いたします。美少年になりたいと強く思っていれば、それが反映される可能性が高くなると思われます。頑張って下さい」
美少年、美少年と呪文を唱えながら、その時を待つ。
世界が揺れる。
極彩色のシャボン玉が飛び交う中をジェットコースターが走る。
目が回るほど気持ちいい!
なんだか絵のようなデータが通過していくが気にしない。
心はひとつ美少年!
美少年になるぞ~~!
ふと世界が止まる。静寂
「どう? ボールさん! 美少年?」
「だ、だいじょうぶ……だと思います」
なんでそこで途惑う?
「それでは、スタート・ポイントに転送します」
急に話題を変えたな。厄介払い?
まぁいいや、先を急ごう。
「ありがとう! 行って来ます!」
「行ってらっしゃい。良きゲーム・ライフを」
世界がフェード・アウトする。
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