第5話 宇宙飯
――県立南高校には学食がある。
これがなかなかに美味い。
一番のオススメは『白身魚のムニエル定食』だ。
白身魚と言って何の魚か分からないあたりに若干の不安も覚えつつ、ムニエルと言っておきながら定食という言葉でそのオシャレ感を打ち壊す。
だが、そんな名前とは裏腹に、その味は絶品だ。
素人からしたら「きっといいバター使ってんだろうなぁ」ぐらいにしか思えないが、詳しいことなどどうでもいいのだ。美味いのだから。
あとサクサク感も堪らない。
飯が進む進む。
さて、そろそろ、本題に入ろうか。
例の宇宙人シロホシ・レイラは、学食には来ない。
お弁当派なのか? いいや違う。
シロホシが食事をしているところを見た者はいない。
学食にも現われず、ただ教室ですごしているのだ。
俺はその事を別に不思議には思わない。
何故なら奴は宇宙人なのだから。
地球人と食事の方法やらが違うのだろう。
だが、たまにシロホシが食事に興味を持つ時がある。
それは俺が持ってくる弁当だ。
うちの学校の学食はタダではない、食券を買わなければ食べられない。
ゆえに食事代節約のために、たまに母が俺に弁当を作らせる。
持たせる、作ってくれる、ではなく「作らせる」だ。
母曰く、男も料理出来なきゃいけない時代なのよ。という事らしい。
仕方ないので母直伝の「のり弁」を作って持っていく。
その時だ、シロホシがこちらを覗き込んでくるのは。
教室で、のり弁をかっ食らう俺の手元を覗き込んでいるのだ。
俺ではなく、俺の手元。
つまり弁当を。
実は宇宙人式食事法なんてなくて、何となく地球のモノを食べるのが怖いとかそんな理由なのではないかと考える。
だから、昼食時、俺は――どうしてだろうその時の俺はおかしかったのかもしれない――シロホシの前に行き、弁当を差し出した。
「食べてみるか?」
「…………無理」
言うに事欠いて「無理」だと……!?
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