第11話 流星雨
季節は梅雨となった。
ジメジメとしたいやな季節だ。
紫陽花は元気に咲き誇り、かたつむりがその上に鎮座しているが、それに情緒を感じる事もない。
それよりも気がかりな事がある。
シロホシが溶けかけている。
なんか人型スライムみたいになっている、鏡面の髪も相まって経験値が多くとれそうな感じだ。
しかし、周りからはいつも通りに見えているらしい。
あれでも解けない擬態の性能に驚きつつ、それを見破ってしまう自分の目をどう評価したらいいか分からなかった。
たしかに苦労する眼だこれは。
球技大会の時と同じで、俺に出来ることなどない。
だけど、どうにかならないものかと思案する。
そもそもああなった原因はなんだ。
記憶を遡る。
…………!
そういえば、彼女が傘をさしているところを見た事がない!?
それさえも擬態しているのか周りに疑問視されていなかったから微妙に気付かなかったが、そういえば毎回びしょ濡れで登下校していた気がする……。
なんだそれは、まさか雨で溶けたとでも言うのか。
宇宙人。雨への耐性無し。
そんな事を言っている場合ではない。
なんとかして彼女に傘を差してもらわねば。
あの溶けかかっている姿はなんというか、可愛くなくもないが、どこか悲哀を感じるというか、溶けかけたアイスクリームを放置しているような罪悪感にかられるというか、とにかくなんとかしなければ。
下校時間。クラスメイトにドロドロと手を振るシロホシに下駄箱過ぎて玄関口。
傘を差し出す事にした。
持ってないから、差していないんだろうという決めつけだが、どうだ?
「いいの? 一緒に?」
……ん? 一緒に?
何故か相合傘で帰る事になった。
折り畳み傘を別に持っていたから、この傘を渡して良かったのだが……。
まあいい。
少なくとも悪い気分じゃなかった。
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