第10話 、。・:
我々――星人に必要以上の運動は必要ない。
体育の授業で発生する不確定な運動量をなんとか調整している日々だ。
そんな中、球技大会なるものが開かれるという事を聞く。
正直。辞退したかったが。優秀な成績をおさめている私は、半ば強制的に参加させられることになった。
競技はバレーボールに参加希望を出した。
特にこだわりはなく、外の競技より室内の競技のがなんとなくよかったというだけだ。
我々――星人は、まだ地球の太陽、紫外線などに慣れきってはいなかった。
不確定要素は少ないほうがいい。
あとは擬態がバレないように、汗が出るように身体を調整しておこう……はぁ辛い。
あまり不自然な(――星人的に)身体の調整は、負担が大きい。
積極的にはやりたくはない。
カプセル状の調整薬を飲む。
準備は整った。
球技大会当日。
ケイジ君がドッジボールに出るらしいので、見に行くことにした。
……確かドッジボールというのは相手にボールを当てに行く競技だと思っていたのだが、全員、当たりに行っているように見える。
そして、見事(?)当たる事に成功したケイジ君は外野でボーッとしていた。
なるほど、そういうやり方があったか。
しかし女子の競技にドッジボールがなかったので、このやり方で自分が休む事は出来なかっただろう……しかし、流石だケイジ君。
まさかの発想にうなっていると、そろそろ時間だとバレーの試合。そのチームメイトに声をかけられる。
ちょうど、ケイジ君のチームが負けたところだった。
バレーの試合、最初は順調に勝っていた。
このままストレートで勝ってしまえば、早く終われるのではと思ったが。
そこで相手の選手交代、バレーボール部のエースの妹(※バレー部ではない)という生徒が参加してきたのだ。
正直、誰が来ようとという気分なのだが、気分はあくまで気分。
現実はそうはいかなかった。
試合は接戦になってしまった。
他所から見ればいい試合なのだろうか、しかしこちらとしては、非常にピンチだ。
一日の規定運動量はすでに超えてしまった。
さらにもう一つ、そのせいで調整薬の効果が裏目に出た。
過剰に汗が出てしまう。
少し体がふらつく。
しかし、誰も気づいてはくれなかった。
自分から体調不良を訴えようとした、その時だった。
「シロホ!…………」
声が聞こえた。間違いなくケイジ君の声だ。
思わずその場にへたり込む。
心配したチームメイトが近づいてくる。
私はケイジ君を見ていた。
チームメイトに支えられ、コートを出る時も見ていた。
思わず口からこぼれる言葉。
「ありがとう」
聞こえたかは分からない。
支えてくれているチームメイトが自分に向かって言ったのだと思ったのだろう。
「いいよいいよ、気にしないで」
と返してくる。
隣の彼女にも確かに感謝している。
だけど。真っ先に、私の不調に気付いてくれたのはケイジ君だけだった。
だからついお礼を言ってしまった。
顔が熱い。
調整薬のせいだろうか。
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