第6話 +-×÷


 食事というのは生命活動の維持のために行われるものだ。

 ゆえに一日一回でいい。

 ――星基準で――時、地球基準で、0時に一回。

 それで充分、お腹いっぱいなのだ。

 ゆえに私は学校で食事をしない。

 地球人に怪しまれるかと思ったが。

 お昼を抜く女子というのは珍しいモノではないらしい。

 周りからはダイエットしているという事になっているらしい。

 ――星の保存食のカロリーはなかなかのものなのだが。

 まあいい。

 周りが不自然に思わないなら好都合だ。

 ――星の保存食のストックは数百年分ある。

 毎日、昼食を抜いても不自然に思われないのは良い事だ。

 しかし、くだんの三鷹ケイジ君だ。

 彼は普段は学食に行っているがたまに教室でお弁当を食べている時がある。

 真っ黒に染まった謎の弁当を。

 気になる、非常に気になる。

 よくよく見てみれば、その黒の下に白米があるのがわかる。

 しかし、上を真っ黒にコーティングする意味はなんなのだろうと気にならずにはいられない。

 しかし、頻繁な接触は厳禁。

 前にした光通信が、接触認定をくらってしまった。

 相手には通じていなかったのに、その事は報告しなかったばかりに、だ。

 しかし、気になる。

 地球人の非効率的な食事に興味はないが、あのケイジ君の「真っ黒いお弁当」にはどうしても興味をそそられてしまう。


 すると、こちらにケイジ君が近づいてくる。

 なんだろう?

 するとお弁当箱を差し出してきたではないか。


「食べてみるか?」

 

 な、なんだってー!?

 そんな、あの真っ黒お弁当を食べてみろだって!?

 そんな興味深い事、こんなチャンス滅多にない!

 しかし……しかしぃ……。

 「…………無理」

 

 だってお腹いっぱいなんだもの…………!!

 うっ、こんなことなら今日だけ一食抜いてくれば良かった……!!

 日誌に、地球人観察のために地球人と同じ食事をすることの許可を求めてみよう、そう私は心に誓ったのだった。


 ああ、食べてみたかった……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る